私のテイスティング法 ~第三章 コメントの文章とまとめ方~
2回ほどテイスティングについて記事を書きましたが、今回は実際のコメントの書き方や記録をどうまとめているかについて書いていきます。今回でようやく終わりです!
(もう少し細かく分ければよかったでしょうか…)
一回目と二回目の記事はこちらになります!
1. 一般的なテイスティングコメントの問題
公式のテイスティングコメントや、よく見るテイスティングコメントって、要素をただ書いていくことが多いと思います。例えば、土屋守氏の『シングルモルトウイスキー大全』に載っている、マッカラン18年のテイスティングコメントはこんな感じです。
香り・・リッチで深みがある。シェリー、トフィー、レーズン、アーモンド、シナモン。加水でマンダリンオレンジ、フルーツケーキ。
味・・・深みがある。スィート。スパイシーで複雑。最高級のプ―アール茶、クローブ。余韻が非常に長い。
総評・・究極ともいえるマッカランの1本。深みがあり余韻が長く続く。イタリアンチーズのゴルゴンゾーラ・ドルチェと・・・・・。
あくまで例です、そこはご理解ください。
これがいけないというつもりは全くありません。
ですが、個人的には何と味気ないものかと思っていしまいます。もちろんこれだけではなく、ウイスキー販売元のコメントやよく見るコメントもこのスタイルばかりです。
はっきり言います。正直嫌いです。
なぜ嫌いかという理由はいくつかあります。
①書かれた香りや味の要素のどの部分なのか?
第一にわからないのはここです。ただ要素が並んでいる中、その要素の何を感じ取って記載しているのか、何もわかりません。
その要素すべてだ!というのかもしれません。
たしかにそういう時もありますし、それならその要素だけを書きます。ですが、そうだとするならこんなに併記できないと思います。それらすべてが、すべての要素で感じられるのですか?
そんなことはないと思います。
さらに、人によってその書かれている要素からなにを想像するのかは違ってきます。他人ではなく、自分自身でも時が経てば変わってしまうでしょう。
そうしたとき、要素内の何なのかが書かれていないとすると、その香りや味のイメージは正しく伝わるでしょうか…?
②その香りや味は同時なのか?それとも時間変化があるのか?
個人的にはこっちのほうが大切です。
意外と気にされていないところかもしれませんが、記載された香りはどういう順番で香ってきたのでしょうか?
ただただ並べられているだけだと、どう香ってくるのかなにもわかりません。
先ほどの文章でいえば、シェリーが来てレーズンが来て~となるのか、シェリーとレーズンにアーモンドやシナモンが同時に感じられるのか、それともシェリーとレーズンの奥からアーモンドやシナモンが香るのか…
味も同様です。ここに書かれているのは明らかに要素が少なくは感じますが…。
深さ、スィートさ、スパイシーさ、プ―アール茶にクローブはいったいいつどのように感じたのでしょうか。ここで読んだだけでは何にもわかりません。
つまり、香りや味の時間経過による変化やその要素の近さ(すぐ来るのか、奥からなのか、軽くなのかかすかになのか、など)がまったく書かれていないのです。
2. 要素の羅列ではなく文章に
さて、上記のような問題点があるからこそ、私は文章でテイスティングコメントを書きます。
あえて文章で書くからには、そこで表現できることをなるべくたくさん使いたいです。そこで、大きな方向性として、以下のことを大前提にしています。それは、
「見返した時に、不完全ながらもより近いイメージを想像できるか」
です。
このために、要素の強さや順番、そして感じられ方を細かく補っていくのです。
①感じられた順番で
まずは、これを大原則にしています。
感じられた順番に書いていかないと、見返した時に想起しづらくなります。
また、読むという行為は時間経過を伴うものです。だからこそ、その読むことによる時間経過と、香りや味の時間経過を同期させるためにも、感じられた順番で書くのが一番だと思います。
印象の強い要素から書いていくこともできますが、結局大きくは変わらないと思います。それなら、見たときに想像しやすいように、感じた順で書く方がいいと思うので。
②香りは「強さ」を明確に
詳しい分析による要素は、第一章と第二章であげたようなやり方でとらえています。
それが、いったいどのように感じられるのかを明確に書く必要があります。
①の感じられた順番で書きながら、その香りの「強さ」をわかるようにします。
その要素が「メインで」感じられるのか、「軽く」感じられるのか、「奥から」なのか、「かすかに」なのかなどです。
基本的には先に感じられるものが強い香りで、後に感じられるものが弱い香りではあります。ですので、上に書いたような順で使っていくことが多いです。
奥からは少しわかりづらいですが、ある要素の背後にそれが感じられるようなイメージの時に使います。
一方で、先に感じられたものを分析すると、弱いけれども含まれている要素を感じることもあります。そういったものなどは、しっかりとメインで香るものでありながらも弱い要素であることを明示しないといけません。そうしたときには、「~や、軽い○○の香りなどがメインで感じられる」などと書くことももあります。
ところで、香りを嗅ぐ中でも時間経過は起こります。すると、どうしても香りに変化が生じます。
そこで、その香りの変化は、新たに「次第に」や「時間がたつと」などと明確に違うタイミングでの香りだとわかるようにします。
これが書かれていないと、いったいいつの香りなのかがわからなくなってしまいます。
ちなみに、この「強さ」は香りだけでなく、味に関しても重要です。「強さ」は要素の比率、もしくは配合を伝える手段です。ですので、次に味のコメントについて書いていきますが、そこでも強さは大切なものになってきます。
③味は、強さに加えて目まぐるしい変化を言葉に
前回の記事で、味は二つある(口内でと、飲み込んでから)と言いましたが、口内で感じるものに関しては、実はあまり大きく味を感じていないように思います。
事実、テイスティングコメントを書いていても、それほど長くなりません。ですので、ここでは、感じられるものをアルコールから差が来るまでにしっかりとメモします。
しかし、香りと同様強さに関してはしっかりと記します。そうでないと、要素の比率/混ざり具合がわからなくなってしまうので…。
(正直、口内に関してはまだまだ分析の余地が残っているかもしれません…。)
さて、そして問題は飲み込んでからです。ここでは刻一刻と感じられる味は変化します。ですので、それをしっかりと言葉にしていきます。
まずは、飲み込んだ瞬間に何が感じられるのかを書きます。大事なのはこの次です。この要素がどう消え、次の要素がどのように感じられてくるのかを詳しく書きます。
たとえば、最初の要素がすぐに消えて次の要素にすぐ切り替わるのであれば、「○○が一気に駆け抜けて消え、◇◇が前面に現れる」みたいな感じです。
同時に、どのくらいの強さなのかもしっかりと書いていきます。香りでも書いた、「メインで~」や「軽く~」などですね。
この強さと要素の変化は、融合させて書くこともできます。
永遠と書けるくらい例はありますが、ここでは毎回言語感覚が試される感じですね。似たような表現はたくさんあるとは思いますが、その中から何がこれを表すのに適しているのかを、瞬時に見抜く感じです…
まあ、疲れますね(笑)
そして、こうしたものが続いていきながら、最後に舌の上に何が残って、すぐに消えるのかゆっくりと残るのかなどを書きます。
ここまでで、ようやく味はひと段落です。
④フィニッシュは香りと同様強さメインで、しかし変化も意識
フィニッシュに関しては、香りと味の中間に位置します。ですので、香りと味で書いたことを組み合わせてやっているだけです。
しいて言うと、ここは余韻にも相当するので、どの程度長く残るのか、軽いのか重いのかなどのコメントは追加でつけるようにしています。
正直、特段書くことはこれ以上ないかも…
3. 「感想」について
これは、一回目の記事の冒頭で、テイスティングコメントは4段階に分けると言いました。その最後のものです。
この感想では、個人的に強く印象に残ったこと、あるいはグラスでの香りや味,フィニッシュに書くほどではないけれどもなにか感じたことなどを書きます。
たとえば、前回飲んだときとの大きな変化や、はじめて飲んだのであれば、他に似ていると感じた銘柄や衝撃を受けた点などです。
あるいは、全体を通しての印象や、全体のまとめ的なことも書きます。全体を通してこの要素が強かっただったり、3段階全て違う要素で面白い、とかだだったりします。
最初に引用した土屋守氏のコメントで言えば、総評にあたる感じです。要は、テイスティングのまとめという感じですね。
ただ、そこまで固くならずに、思ったことで書いておきたいことをただただ書く感じです。
ここはゆるくやってます。ですから体調的なことや、精神的なことも書いたりします(笑)
ここをしっかり書いておくと、次に振り返ってみたときにも、当時の自分がなにを思って飲んでいたのかがわかります。
言ってしまえば、日記にも近いかもしれませんね。
4. テイスティングコメントの個人的まとめかた
①スマホでメモ
まず、実際にテイスティングをして書いているときには、スマホのメモ帳を使用しています。
これは、間違ったり表現を変更したいときに修正しやすいからです。
文章でコメントを書いているので、いきなり紙に書くと修正しづらく、修正しようとすると時間がかかってしまいます。しかし、スマホであれば、テイスティング中に表現を変えたいと思ったときに、ぱっとその部分だけ修正できます。
この時に、日付や飲み方(ストレートやロック、ソーダ割など)も一緒に書いておきます。
②ルーズリーフでまとめる
スマホにまとめたものを、時間があるときにルーズリーフに書き移して、ファイルに入れて、銘柄ごとにまとめていきます。
面倒であればそのままスマホでも、パソコンでまとめてもいいと思います。
しかし、私は紙のほうがあとからでも探しやすく、さらにあえて紙に書くことで改めてその銘柄の印象を再確認することになり、印象を覚えていけるというメリットがあるようにも思います。
まとめたものは、下の写真です。
これは、左側はグレンモーレンジィ・キンタルバン14年の最後のページで、右ページはグレンモーレンジィ・アルタの最初のページです。
日付や飲み方、香り、味、フィニッシュ、感想などはしっかりと書いていますが、右ページの上を見るとわかるように、銘柄の名前やアルコール度数、そしてウイスキーならハイランドやスペイサイド,ジャパニーズと言った「地域」や、シングルモルトやブレンデッドモルト,ブレンデッドなどと言った「区分」、さらに開栓日も書いています。
見返した時にわかるように、ということで、そこまで書いています。
おわりに
非常に長くなりましたが、私のテイスティング法はこれにておしまいです!
あくまでも個人的なことですし、別にプロになろうとも思っていません。しかし、好きであるからには対象のことをしっかりとわかりたいのです。だからこそ、自己流ではありますが、このようにやっています。
ここまでの記事が、何かしらの参考になればうれしいです。
それでは!
私のテイスティング法 ~第二章 分析中の思考~
今回は、以前のテイスティング法の続きで、分析中にどういう風に考えているのかということを解説していきたいと思います。
前回の記事はこちらです。
1. 感じたまま
具体的な分析より以前に、まずはその香りや味を感じてどう思うのかは大切です。
やはり、まずは感じたままです。これを忘れてはいけないと思います。
「好き!」「ヤバい!」「好きじゃない」「無理…」
私はそれを基本にしています。第一はここからです。
ですから、詳細な分析をする直前にも、嫌いだったり嫌なものを感じるとしかめっ面になり、好きなものを感じると興奮します(笑)
このように、感じたままをしっかりと認識することで、大きな道筋が決まっていきます。
そして、なんで「好き」なのか、何が「ヤバい」のか、なんで「無理」なのかを探っていくのです。
2. 要素をとらえていく
① 感じたままで要素を把握
要素をとらえていくことでも、感じたままは大切です。
感じたままをダイレクトに書くことで、自分も見返した時に想像しやすいですし、飲んだことある人は自分とのとらえ方の違いを簡単にわかりますし、飲んだことない人はそのコメントからの想像がしやすくなります。
最近で衝撃的だったのは、「ももの缶詰を開けた香り」です(笑)
もちろんこのコメントは、この段階だけではなく、これから述べていく段階を認識したうえで出てきた言葉でですが、そこまで詳細に分析するより前に、感じたままでこの言葉が出てきました。
でも、こう言うとすぐに想像ができるでしょう。自分も他の人も、こうして感じたままを書けば容易に想像ができます。
さて、感じたままをとらえることによって、大まかな要素をとらえていきます。
ここでは、リンゴ、オレンジ、白ブドウ、カラメル、メープルシロップ、レーズン、花などという感じです。
この上で、より詳細な分析に行きます。
② 分析その1
それでは、感じたままでとらえた大まかな要素をより詳細に分析していきます。
たとえばオレンジであれば、ピール(皮)なのか、ピールオイル(皮を絞って出るオイル)なのか、実(ひとつひとつのつぶつぶ)なのか、または房の皮なのか、それとも房とピールの間のわたなのか…
リンゴであれば、若い青リンゴなのか、赤いけど熟しきっていないリンゴなのか、それとも熟したリンゴなのか、さらには焼きリンゴなのか、アップルパイなのか、リンゴのコンポートなのか、リンゴジャムなのか、全く違ってリンゴの花の香りなのか、リンゴの木の枝なのか…
上にあげたのはほんの一例にすぎませんが、こうして、要素の部位や状態を明確にしていきます。
ところで、要素によって、分析方法の向き不向きはあると思うので、これが無理なら他の方法をとります。これは、ここからあげるどれにも共通することです。
③ 分析その2
今度は、感じたままの要素を別方向から分析していきます。
もちろん順序なんてなく、こちらを先にやることも、同時にやることももちろんあります。便宜的にその2などと順序をつけていることはご理解ください。ただ、こちらの分析をする際は、あまりその1と同時にやることは少ないですね。
さて、今度は部位や状態ではなく、その要素の中の成分的な面に注目します。
たとえば、オレンジの実の甘い部分なのか、酸っぱい部分なのか、それともあのつぶつぶした質感なのか、それら全てなのか…
ただオレンジの実と思ったとしても、その甘い部分からそれを想起しているのか、それともその酸味からそれを想起しているのかで、かなり違った香りや味になってしまいます。
他にも、焦げ感といっても、カラメルの焦げなのか、焚き火などの木の焦げなのか、それとも麦を燻した焦げなのか、あるいはベーコンなどの焦げなのか…。
これら全て違っていると思います。
まとめると、大きな要素のどの部分なのかを明確にするということですね。
こうすることで、より正確に何を感じたのかがわかるのです。
④ 分析その3
その2と同じように要素の中の成分的な面に注目するにしても、複合的に絞っていくこともあります。
たとえば、甘さ、といっても、バニラやバナナに共通する甘さと、リンゴや洋ナシに共通する甘さ、さらにはカラメルや黒糖に共通する甘さは全て違っています。
このように、なにかとなにか(2つに限らず3つでも4つでも)に共通する○○というように絞りこむこともあります。
実際には、その1やその2よりも、むしろこちらのほうが多い気がします。
ですが、この方法は複数の方向から限定していく、という挟み撃ち方式を使っているので、少し難易度が高いです。
慣れると、間にある感覚を表現できるので、幅が広がるように思います。
⑤比喩的な分析
これは上の三つを駆使してもよくわからないけれども、なぜかその要素を感じるように思う、という時に用います。
「○○のような~」というやつを使います。
ですので、これは分析というよりも「整理」という感じです。
これ以上特筆することもないですかね(笑)
3. 時間との闘い
このようにして詳細な分析をしていくわけですが、これらは常に時間との勝負です。
時間がたてば、香りも味も必ず変化します。たった10秒、いや5秒程度でも大きく変化してしまうこともあります。特に、飲み込んでからの味とフィニッシュは変化が速いです。
ですから、ここまで長々と脳内で何を考えて分析しているかを書いてきましたが、これはすべてその時間でやっています。感じたままも瞬時で認識して、度の分析を使用するかなどは、意図的に選ぶというよりも気づいたら選んで先に行ってるレベルです。
もちろん同時にメモもしますから、この時は頭フル回転で、脳の活動すべてを分析とメモにまわしてる感じです。オーバーワークになる寸前ですね、ハイ。
特に味とフィニッシュの分析中は、ヤバいです。
ですから分析の最中に思っていることは、「はやく思い浮かんでくれ」です(笑)
思い浮かばない時もありますが、そういう時は無理をしすぎず、わかる範囲で書いていきます。書いていると思い浮かぶときもあります。
ちなみにどうしても無理なときは、以前自分が書いたコメントを参照して表現を見つけることもあります。
ですので、もし誰か私と一緒に飲んでいるとき、ちょうど一口目や二口目を飲んでいるときに話しかけて反応がなかったとしても、ご了承ください…(笑)
(半分ウソで、半分本当です)
4. 分析のイメージ
あまり考えたことがないと思いますが、このあいだTwitterでやりとりをしていて意外と人それぞれ違うことが判明したので、書きます。
一般的には、「例える」というやり方が多いかもしれません。これは○○みたいな香り、もしくは味、という感じですね。
ですが、私は何かそれとは違うんですね。もちろんそれを使う時もありますが、基本的にはそれとはイメージが違っているんです。
私の場合は、香りや味が図形だとした場合、「重なっているライン、あるいは接線、もしくは近い線」のイメージなのです。
ですから、「知っているものの香りや味の要素を用いることで、対象の香りや味の図形を再現する」ともいえるかもしれません。
これを図にしてみるとこんな感じです。
え?図がわかりづらい?それはすみません…
この図においては、単純化するためにすべて「香り」にしていますが、「味」も同様です。そして、面積、つまり図形の内側は含まないのでご理解ください。
真ん中の赤い線がウイスキーなど、テイスティング対象になります。この対象はフィクションなので、どの銘柄かなどと考えないでくださいね(笑)
外側に書かれている図形が何を表しているかと、それと対象の共通部分や接点が何なのかを書いています。離れている場合は、近いけれどもそのものではないということを表しています。
このように、テイスティングする際は、
「この図形の線や通る点は、知っているものの何にあたるのか」
という視点で分析をしています。ですから、例えてないことが多いんですね。まさにそれであって、それ以外のなにものでもないという時が多々あります。
前に出てきた「ももの缶詰」は、まさにそれであって、それ以外ではありえないんです。「ももの缶詰『みたい』」ではないんですね。
もしかしたら、それそのものなわけないと思うかもしれません。ですが、目の前にあるものが何なのかを知らずに、その成分を認識して嗅いだり味わったら、確実にそれだと誤認してしまうと僕の中では言えるんです。
だからこそ、第二段階のように、あそこまで細かく分析するのです。
もちろん、例えを使う時もあります。それそのものではないけれどもそのような香りがする、という場合です。そういう時は、「のような」や「みたいな」という表現をつけて分析することで、例えていることを明確にしています。
ですが、その使用量は少ないかもしれません。ですから、上の具体的な分析の際にも、比喩的なものは最後に書いたのです。
便宜上この位置でまとめましたが、これがあるからこそ、今まで書いてきたようなやり方になっているんですね。
おわりに
今回はテイスティング中の思考や、具体的にどう分析しているのかについて書いていきました。テイスティングでの分析のイメージは、ひとりひとり違っているとおもうので、ぜひご自分のイメージを確認してみてほしいです。
次回の記事はこちらです!テイスティングコメントの文章とまとめ方について書いています。
私のテイスティング法 ~第一章 テイスティングの動作~
数回にかけて、普段ウイスキーやブランデーを飲むときに、どのようにテイスティングしているのかをまとめようと思います。
基本的にはお酒、特に蒸留酒のテイスティングのやり方ですが、お茶に関してもこれに準じてやっています。
最初の今回はテイスティング中の動作についてです。
0. 4段階にわける
動作、と言っても、それ以前にどのように分けてコメントを書いているのかがわからないと解説のしようがありませんね。
私は具体的な普段テイスティングをする際、対象がなんであれ、4段階を基本にしてます。その4段階はこうです。
① 香り
② 味
③ フィニッシュ(鼻に抜ける香り)
④ 感想
まとめるときは、基本この4つでやることにしています。
ただ、厳密に言うと、2. 味 は口のなかでの味と、飲み込んでから口に残る味にわけているので、5段階とも言えるかもしれません。
4の感想については、テイスティングで感じられたものの付録的な事で、実際のテイスティングとは関係ないので、のちのち説明します。
ですので、今回は1.香り、2.味、3.フィニッシュの分析の際の動作についてです。
1. 香り
ここでいう香りとは、グラスでの香りです。
ストレートやTwice Up、その他テイスティンググラスで常温の場合、グラスを傾けて一周ぐるりと液体をゆっくり回します。
この方が香りが立ちやすいのです。グラスの表面についたところからも揮発していくので、より香り成分が多く感じられるようになるんですね。
ぐしゃぐしゃ回すという手もありますが、後述の理由から液面はあまり揺らしたくないので、そうはしません。
もちろん、これをやらないで嗅ぐというのもありです。あくまで私はです。
a.遠くからの香り?
遠くからでも感じとれる香りは、無理に感じ取ろうとはしません。
グラスに注いで放置しているのに漂って来るくらい強い場合のみ、記載するようにしてます。
わざわざ遠くから嗅いでも、あんまり感じとれないことが多いんですよね。
たしかに一般的には、遠くからと近くからで違う、とか言われたりします。でも、その遠くってどれくらいなんでしょう?
スマホを手に持ってるときの画面くらい離れてでしょうか?それとも手を伸ばしたときくらいでしょうか?
基準が明確じゃないんですよね。ですので、個人として楽しむのはありだと思いますが、コメントとして残すには再現性が低そうです…。
一方で、漂ってくるのなら、どこに置いたとしても漂ってくるくらい強いわけですから、基準もなにもありません。感じたままを書いたとしても、他の人も他のシチュエーションでも感じとれる可能性が高いでしょう。
ですので、そういうものだけ書きます。
b.近くでの香り
近く、といってもグラスに鼻を突っ込んではいけません。ぼくもたまにやってしまうのですが、最悪です…。
グラスに鼻を突っ込むと、グラス内の湿度がより上がってしまいます。そして香りの開きかたが変わります。さらに、この癖がつくと、バーでも出てしまいます。最悪ですね、やめましょう。
グラスからすぐの位置で嗅ぎます。
吐いた鼻息が絶対にグラスのなかに入らないように、そしてなるべく液面を動かさないように注意します。
鼻息が入ってしまうと、グラス内の湿度が上昇したり、息のスピードで液面を揺らしたり、グラス内の二酸化炭素量が増えたり…。様々な要因で香りが変わってしまいます。
そして、液面を動かすと、空気に触れて開いてきた表面が崩れて、中に戻ってしまいます。こうして、また開いてない液体が上に出てきてしまい、いつまでたっても開いていない香りしか出てこなくなります。
なるべく開かせた方が、その液体のすべてを発揮できるようになるので、なるべく動かさないようにしています。
それならよく回して全体を開かせれば…というかもしれませんが、そんな簡単には開きません。すると、むしろ液面を維持し続けた方が、しっかりと開いた香りを嗅ぐことができると思うのです。
もちろんここでいう開くというのは、開栓後時間が経つことによって開くのとは違います。それが「先天的な」ものだとたとえると、このグラス内の液面でどれだけ開くのかというのは「後天的な」ものと言えるかもしれません。
これは、どちらも開く状況が異なっているので、グラスで開いたら瓶内で開いたある時点と同じというわけにはいかないと思います。
+αの分析
普通に嗅いで感じ取るだけでたいていは終わります。
しかし、香りが弱かったり、なにかよくわからない香りがあるときは分析を続けるために、嗅ぎ方を変えていきます。鼻の中の香りを感じる位置に注意するのです。
まずは小鼻のあたりで、次に鼻の奥でという感じです。こうすると、新たな香りを発見できたり、正確に分析できたりします。
2. 味
①口の中での味
口に含んだら、まずはそれを分析します。
あえて舌は全く動かさず、空気も含まず、口に入れた瞬間をキープします。
口の中でぐるぐるとまわしてしまうと、普段飲むときとは違う味を感じ取ってしまったり、アルコール感を急に強く感じてしまったりという問題があるので僕はやりません。
ポテンシャルの把握としてはありだと思います。
事実、舌の場所によって感じる味は違いますから、口の中で液体を回すことでそこにいきわたらせることもできます。そうして、いろいろな成分を感じ取るのもいいと思います。
しかし、それをやると唾液がより分泌されやすくなって味は変わらないのか、という不安があります。口に入れた瞬間をキープするのは、それをなるべく避けたいというのもあるのです。
さて、時間経過とともにアルコールの辛さが来るので、それまでの勝負です。
素早く分析してメモしていきます。
②飲み込んでからの味
これは人によってはフィニッシュにしてしまっていたり、逆にフィニッシュをこことまとめてしまっていたり、あるいは両者まとめて「余韻」言ったりと、かなりばらつきのあるところです。
ですが、味はむしろここからが本番だと思います。飲み込んでからは、時間経過とともに感じられる味は大きく変化していきます。といっても、その間10秒にも似たないかもしれません。しかし、その10秒がそれの評価を決めてしまう、それほど大事であると思うのです。
というか、みなさんここを楽しんでいると思うのですが…違いました?
さて、ここはまさに時間との戦いです。メモしている瞬間にも感じる風味は変わってきます。
ですので、より時間経過での変化を詳しく説明するように書いていきます。
飲み込んだ瞬間の味、少し経って現れる味、そしてどのように舌からその味はいなくなっていくのか…。
すべてが大切だと思います。
ですので、飲み込む瞬間に覚悟を決めた方がいいかもしれません(笑)
※2口目はだめなのか?
そんなに1口目でやらずに、わからなければ2口目でやればいいじゃん、と思うかもしれません。
ですが、2口目はその味に慣れたうえで感じる味なのです。明らかに感じられる味は変わってきます。先ほど飲んでいる間にも、それを再確認しました。
慣れた方が分析は正確になるのでは?と思うでしょう。
これはもしかすると僕だけかもしれませんが、慣れてしまうと細部に気付かなくなります。舌が新鮮ではない、という言い方がいいのかもしれません。
慣れてしまうと、その味は直前に感じた記憶が残った状態で感じているものです。
ですから、慣れる前には感じられる「異質さ」や「繊細な味」は意識からなくなり、その味の中で強烈だった部分が強調されてしまう気がするのです。
一口目のアルコールによって、舌が若干マヒした状態になってしまっていることも理由として挙げられるかもしれません。
また、一口目でしっかりと分析できれば、一杯の中で分析に使わずに純粋に楽しめる時間が増えます。
ですから、なるべく1口目でこの味での分析は終わらせたいのです。
3. フィニッシュ(鼻で感じる香り)
これは、1口目で味に集中しているため、2口目にするしかありません。
ですが、経験的にあまり変化があるようには思えないのです。おそらく、胃から登ってくる香りや、のどや口に残った成分から登ってくる香りなので、あまり変化がないのでしょう…(確証も自信もないですが)
しかし、これも意外と早く消えてしまうものが多いです。ですから、なるべく早く分析を終了したいです。
鼻から軽く息を吐いて、吐く息の中に混ざっている香りを感じます。
もちろん、一番液体が残っているのは口の中ですから、飲み込んだ後の味と近い香りではあります。
ですので、鼻の奥で感じているのか、舌で感じているのかは明確に分けなければなりません。
慣れない人には少し訓練が必要かもしれませんが、息を吐きながら鼻の奥に神経を集中させる。こうして感じ取っていきます。
また、飲み込んだ後の味と同様、どれくらい早く消えていくのかも重要なポイントです。余韻の長さと直結するところなので、そういった意味で非常に大事です。
おわりに
さて、今回はテイスティング最中の動作についてまとめました。
次回はこの作業をしている間、頭では何を考えているのか、という実際の分析中の施行についてです。
お楽しみに!
次回の記事はこちらです!
ロワ・デ・キームンの香りと味
こんにちは!
今日はマリアージュ・フレールのロワ・デ・キームン(Roi du Keemn)のレビューです!
1.キームン紅茶とは?
本題に行く前に、少しキームン紅茶について解説します。
キームン、漢字で書くと「祁門」で、キーマンと言ったりキーモンと言ったりもします。これは地名で、中国の安徽省黄山市祁門県のことです。ここで作られた紅茶しか、キームン紅茶を名乗ることはできません。同じ安徽省でも違う県のものは「安徽紅茶」として区別されるようです。
キームン紅茶は、インドのダージリン、スリランカのウヴァとともに世界三大銘茶として知られます。その素晴らしさから、「紅茶のブルゴーニュ酒」ともいわれます。一般的にはスモーキーフレーバーと言われますが、それはあまり品質の高くないもの、特に19~20世紀に注目されて輸出量が増えた時期に多かった粗悪品に多かった香りです。
上質なものにはスモーキーフレーバーはほとんど見られず、蘭やバラの花の香りがすると言われます。水色は鮮やかな赤色で、味は穏やかで柔らかく、ほのかな甘みを感じます。また、茶葉は丁寧にねじられているため、なかなか開きません。そのため、抽出には5分かそれ以上かかります。
実は、マリアージュ・フレールで一番有名なフレーバーティーの「マルコ・ポーロ」はキームンがベースになっています。
2.ロワ・デ・キームン(Roi du Keemun)
マリアージュ・フレールのキームンの中では最高ランクのもので、ロワ・デ・キームン(Roi du Keemun)はフランス語で「キームンの王」を意味します。価格も税抜5,700円と高いですが、それだけの良さはあるように思えます。
①茶葉の形状と香り
ランクはFTGFOP。フルリーフで全くちぎれておらず、茶葉そのままの長さで一枚一枚ねじられています。色も非常に黒く(その分光の反射で白っぽくなる)、少し金色のゴールデンチップが入っていますね。
香りは甘い洋菓子や黒糖、ラベンダー、紫色の蘭などを思わせます。スモーキーさは全くと言っていいほど感じられません。
②水色,香り,味
・水色
写真ではわかりづらいですが、非常に鮮やかで深紅と表現するのが最も適しています。ルビーのように思えるほど、深くてきれいな赤色をしていて、みていてうっとりするレベルです…。
・香り
黒糖やマカロンのような甘く官能的な香りがします。椿の葉のように固く艶のある質感や、葦原のように少し枯れた河原の香りも感じられます。さらに、笹や竹の葉のような香りもあります。奥に若干の焦げ感と、黒く湿った土のような香りも感じられます。
・味
口に含むと枯れた草のような落ち着いた風味と、軽い渋み、さらにお茶の葉の甘みがしっかりと感じらます。飲み込むと、そのお茶の甘みは洋菓子の甘みのようにも感じられ、若干サツマイモのようにも感じます。余韻は長く、コクがしっかりと感じられます。
③感想
一般的に言われる蘭やバラというよりも、ラベンダー感を強く感じます。やはり水色は最高です。先に述べ調に、どうしても写真ではわかりづらいところがありますが、実際に見てみると、うっとりするくらいきれいで上品な、透き通った赤色をしています。香りと味も素晴らしく、全体としては仏教的な全てを包み込んでくれるような優しさを感じます。最高の紅茶の一つと言えるでしょう…。
3.抽出時間について
あくまで個人的にですが、5分がいいと思います。一般的な紅茶と同じく3分でもいいとは思いますが、茶葉の形状的に、やはり3分だとしっかりと開いてくれません。イギリス式で抽出した場合も、ジャンピングの終了が4分強くらいなので、少なくともそこまでは抽出が続いているものと思われます。一方で、5分よりも進むと渋みが次第に強くなってしまいます。このロワ・デ・キームンの場合、茶葉の純粋な甘みをしっかりと感じられるのが魅力でもあります。ですので、渋みは抑制したほうがいいと思います。
4.イギリス式とフランス式での違い
イギリス式とフランス式(コットン使用)における違いです。どちらも一杯分に換算して、茶葉2.5g,お湯200mlで、抽出時間は5分での比較です。どちらがいいかの参考にしていただけると幸いです。
①イギリス式での特徴
イギリス式で淹れた場合の良い点は、乾燥した状態での茶葉の香りが淹れてもしっかりと感じられる点です。飲む際に、乾燥した茶葉で感じられるような、ラベンダーやブルーベリーの香りがしっかりと感じられます。一方で、デメリットとして渋みの強さがあげられます。アッサムほど強い渋みはありません。しかし、口に含んだ際に渋みやえぐみをどうしても感じてしまいます。このロワ・デ・キームンの良さは、そのまろやかで上品な味わいでもあるので、少しマイナスです…。 確かにミルクティーに合うような風味です。
②フランス式での特徴
フランス式で淹れた場合の良い点は、なんといってもその味のまろやかさです。コットンフィルターが茶間から出るアクを吸着してくれるので、味に全く渋みが出ません。一方で、香りも一部吸収してしまっているのか、乾燥した状態の茶葉で感じるラベンダーのような香りは奥で少し感じられる程度になってしまいます。逆にその分、艶感と枯れ気味の草のような落ち着く香りが前に出てきます。
どちらがいいか
僕個人としてはフランス式をお勧めします。イギリス式で顕著に感じるラベンダーやブルーベリーの香りは確かに素晴らしいですが、フランス式でも香らないわけではありません。そして、味に関してはフランス式にイギリス式は勝てません。明らかにフランス式のほうがバランスが良いのです。
おわりに
いかがでしたでしょうか?個人的に、ロワ・デ・キームンは大好きな紅茶です…。キームンの香りと特徴、そしてマリアージュ・フレールのロワ・デ・キームンの魅力を知っていただければ幸いです。
それでは!
フランス式紅茶の淹れ方と抽出時間の話
みなさん、紅茶ってどう入れてますか?
紅茶は茶葉の成分が一気に抽出されるので、ほんの少しの差で味わいが大きく変わってしまうお茶でもあります。今回はそんな中でもフランス式の紅茶の淹れ方について解説していきます。
1..イギリス式?フランス式?
いきなり何かと思われるかもしれませんが、一般に言われる、ポットに茶葉をそのまま入れてジャンピングさせる紅茶の淹れ方、あれは実はイギリス式なのです。このやり方は、日本では主流すぎて多くの本やサイト、動画で解説されています。ですのでここで詳しくは解説しません。
一方でフランス式はほとんどと言っていいほど知られていません。紅茶を詳しく知っている人なら知っているかもしれませんが、そういう人でも知らない人はいる事でしょう…。
実は、フランスではイギリスよりも先にお茶が入ってきていました。しかし、お茶は体に悪いのではないかという議論が起こったこともあり、日常生活には紅茶ではなくコーヒーが取り入れられました。結果、紅茶はフレーバーティーがメインとなり、サロン・ド・テ(Salon de thé)と呼ばれる喫茶店で飲むものになりました。香りを楽しむフレーバーティーであるため、味に渋みが出ることは望ましくありません。そのため、渋いお茶で作るミルクティーを好むイギリスとは違った淹れ方になったと考えられます。
2.フランス式紅茶の淹れ方
①用意する道具
道具は以下の通りです。
・やかん
・はかり(正確に測る必要があるので0.1g単位、最低でも0.5g単位が望ましい)
・ティーポット(1つで大丈夫)
・コットンフィルター
・ティーカップ
コットンフィルターを用いることがフランス式の特徴です。コットンは余計な渋みを吸着してくれるので、上品な味わいになるのです。 逆に、それ以外はイギリス式、つまり一般的な淹れ方とほとんど変わりません。
※コットンフィルターではなく、金網のようなものに茶葉を入れるのも、簡易フランス式と言えるかもしれません。もしかすると渋みの抑制以外に、狭いスペースで抽出して余計な成分を出さないようにすることもあるのかもしれませんね…。
②淹れ方
先にティーポットとティーカップをお湯で温めたり、沸かしたてのお湯を使ったり、正確に茶葉を図るところまでは同じです。
1.コットンフィルターをティーポットにセットし、その中に茶葉を入れます。
2.茶葉の上からお湯を注ぎ、適切な抽出時間蒸らします。
3.時間がたったらコットンフィルターごと茶葉をとり、少しかき混ぜます。
(味を均一にするため)
4.カップに注いで楽しむ
意外と簡単ですね?
3.イギリス式とフランス式の比較
フランス式の紅茶の淹れ方はわかったと思いますが、違いは何なのか改めてみてみましょう。それぞれのメリットとデメリットを見ていきます。
①イギリス式のメリットとデメリット
メリット
・ジャンピングが抽出状況の目安になる
・ミルクティー向けの、少し渋みが強めの紅茶が楽しめる
デメリット
・水分が残っている限り抽出が続いてしまう
・抽出を止めたいならすべて移し替えるしかなく、ポットが2つ必要
・ストレートティーだと、移し替えないと渋すぎてしまうことが多い
ジャンピングが終わったときにはたいていおいしい状態になっていることが多いので、ジャンピングを見ていればいつがいいときかがわかるのは良い点です。しかし、ジャンピングはブロークンタイプ以下の細かい茶葉でないと、茶葉が重かったり空気が付着しすぎて浮力がつきすぎたりして、底にたまったり上に浮いたままになったりしてしまうことが多いです。そのため慣れないとジャンピングを目安にすることができなかったりもします。
また、イギリス式の場合だと、ポットが2つないと永遠に抽出が止まらないことは大きいです。差し湯すればオッケー、という方は何も問題ないのですが、そうでないとポットを二つ使うので洗い物が面倒です…。
②フランス式のメリットとデメリット
メリット
・抽出をいいところで止められる
・コットンで渋みが吸着され、上品でマイルドな口当たりになる
・茶葉の回収がしやすく処理しやすい
デメリット
・抽出の目安になる指標が何もない
茶葉を抜いてしまうので、自分の好みの濃さの時点で抽出を止められるのは大きいです。ポットも一つで済むので、洗い物も減ります。それに茶葉がずっとコットンフィルターに入っているので、抽出後の処理も楽です。
逆にデメリットとしては、抽出の目安がないことがあげられます。これは、もう抽出時間を覚えておくしかないです。
ここまでを考えると、僕は、フランス式のほうが楽でありながら渋みが抑えられ、ストレートでも美味しく飲みやすい紅茶が淹れやすいように思います。
4.抽出時間について
フランス式のデメリットとして、抽出の目安がないと書きました。そこで、抽出時間の目安と考え方について解説しましょう。
①メーカー推奨が基準
基本的にはそのメーカーの推奨している時間で入れるのが良いです。それが、そのメーカーが一番おいしいと自信を持っているところでもあるからです。
ただし、有名な紅茶メーカーはほとんど海外のものだという点に注意してください。実は日本語表記がなされていなかったり、日本語表記がただ訳しただけだったりする場合があるのです。これの何が問題かというと、海外の基準で書かれている場合、そこで使用されているのは硬度が若干高い水であり、日本のような軟水で入れる基準ではないということです。軟水で入れると、抽出はかなり早く進みます。3分~4分以上抽出してしまうと、ほとんどの紅茶は濃すぎて渋く苦いものになってしまうのです。また、日本ではイギリスでいわれているような「ポットのための一杯分の茶葉」も必要ありません。抽出時間と同様の理由で、濃すぎる紅茶になってしまいます…。
②茶葉の形状による時間差
茶葉の形状も抽出時間に大きくかかわってきます。フルリーフであれば、茶葉が開くのに時間がかかるので抽出時間は少し長めがいいです。ブロークンタイプ(BOPなど)やCTC製法による茶葉は、抽出しやすく作られているので短い抽出時間のほうがいいでしょう。これで1分近くも抽出時間が変わってしまうので、非常に大きいです…。
③抽出時間と旨味と渋みの量
茶葉の旨味の抽出は2分でピークがやってきます。それ以後、旨味の抽出量は下がっていってしまいます。対して、渋みの抽出はそれ以後も増加していきます。紅茶は渋みも重要な要素なのですが、渋すぎるとよくありません。そこで、この2分というのが一つのカギになる時間となるでしょう。
私の考える目安
個人的に日本での目安としては、一杯分として、茶葉2.5g~3g、お湯180ml~250ml、抽出時間2分~4分の範囲で好きに変えるのがいいと思います。
もう少し具体的に言うと、CTCタイプやブロークンタイプの茶葉は2分台で抽出を終えた方がよさそうです。フルリーフでは、渋みが強めの茶葉は、渋みを出しすぎないようにしながらも少し出すため2分30秒程度に。それ以外のものは3分から3分30秒程度にするのがいいと思います。あとは、ぜひ自分の好みに合った抽出時間を見つけてください!
5.ティーバッグについて
ここまで丁寧に読んでくださった皆さんは何かに気付いていませんか?
フランス式紅茶は、乱暴に言ってしまうとティーバッグとあまり差がないのです。もちろんティーバッグはコットンではないですし、茶葉の膨らむことのできるスペースも違っているのですが、基本的な方式としては同じだともいえます。
何が言いたいかというと、ティーバッグを卑下する必要は全くないということです。結局やっていることはフランス式の紅茶と変わらないのですから。(逆にフランスサイドから怒られそうですね…笑)
せっかくなので、簡単にはなりますが、ティーバッグで入れる時の注意点をまとめておきます。
①お湯を注いでからティーバッグを入れる(逆だと余計な空気がティーバッグ内に入ってしまう)
②しっかりとティーバッグを蒸らす
③ティーバッグは振ったり絞ったりしない
ティーバッグはこれさえ守れば非常においしい紅茶が手軽に飲める、画期的なものです。これを守って、ティーバッグでも美味しい紅茶を楽しみましょう!
おわりに
いかかでしたでしょうか?フランス式で紅茶をぜひ淹れてみてください。コットンフィルターは、「紅茶 コットンフィルター」などと検索すると意外と出てきます。
ただ、最後に大切なのは、「あなたがおいしいと思う淹れ方が一番おいしい」ことと、「質のいい茶葉であればどんな飲み方をしてもおいしい」ということです。人それぞれ好みは違いますから、ぜひ自分に合った淹れ方を見つけてください。みなさんの紅茶生活がさらに良いものとなることを願っています!
ダージリンについて
紅茶の産地には様々な場所があります。インドは紅茶の生産量が世界一ですが、ダージリンはその中でも非常に有名な産地です。そのダージリンについて解説していきます。
1.ダージリンの場所と気候
ダージリンと呼ばれる地域は、インド西ベンガル州の最北端にあります。わからないと思うので地図を見ましょう。下のインド全図のうち、赤くなっているのが西ベンガル州です。そして、そこの拡大図で、赤く囲った地域がダージリン一帯になります。すぐ西はネパールになり、東も少し行けばブータンに出てしまう、なんとも複雑な位置にあります。
(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A5%BF%E3%83%99%E3%83%B3%E3%82%AC%E3%83%AB%E5%B7%9E の画像をもとに編集)
また、ここはすでにヒマラヤ山脈の一部であり、地域の平均の標高は2000mを超えます。そのため冷涼な気候で、朝晩には霧が発生します。しかし、冬に0度を下回ることがなく降雪がないため、お茶の栽培に適しています。この独特な気候が中国の茶の生産地と似ていたため、それを見込んで、イギリス植民地時代に茶の栽培が開始されました。そのため、中国種がもともと多い地域でもあります。
こうした地域に、合計で80以上の茶園が存在しています。
2.クオリティーシーズン
ダージリンに限らずですが、クオリティーシーズンと呼ばれる旬の時期があります。ダージリンではこれが年に三回あります。3~4月など春に摘まれたものをファースト・フラッシュ、5~6月など夏に摘まれたものをセカンド・フラッシュ、10~11月など秋に摘まれたものをオータムナルと呼びます。
①ファースト・フラッシュ
3~4月頃に収穫される、いわゆる一番茶です。春摘みとも呼ばれます。この時期はまだ涼しいため発酵がなかなか進まず、茶葉も緑のままのものが多くなります。そのため、水色も淡い黄色や淡いオレンジ色になります。ある意味では薄い紅茶ですが、逆にそのフレッシュさ/若々しさが魅力でもあります。一番緑茶に近いダージリンの紅茶と言えるかもしれません。
②セカンド・フラッシュ
5~6月に収穫される二番茶で、夏摘みとも呼ばれます。この時期には昆虫による食害や乾燥などからストレスを受け、そのおかげでダージリン特有の独特の風味を生み出します。マスカテル・フレーバーという、マスカットのような香りがすると表現されることがありますが、これは非常にあいまいな表現です。たしかにマスカットのようなみずみずしい酸味を伴った香りがすることもありますが、それがすべてのセカンド・フラッシュで感じられるわけではありません。ないからと言ってダージリンの良さがなくなるわけではないので、この用語に惑わされる必要はありません。
③オータムナル
10~11月など秋も深まったころに収穫されます。モンスーン(季節風)によるたくさんの雨と夏の日照により、たくさんの栄養を蓄えた時期であるため、非常に深みのある味わいになります。収穫時期が遅い分、このように茶園の気候の影響を最も色濃く反映しており、その茶園の特徴が最大限発揮されたものでもあります。水色も3つのクオリティーシーズンの中で最も濃いものとなります。一方で、香りは穏やかになります。また、この時期になると生産しない茶園も多いため、実は希少かもしれません。
3.ダージリンの紅茶?
本当にダージリン?
ダージリンと名の付く紅茶はたくさん販売されています。しかし、ダージリン産の紅茶はインド産の1パーセント程度…。明らかに足りません。これにはダージリンと名乗れる基準が関係してきます。
実は、ダージリン産の茶葉とその他の産地の茶葉をブレンドしたものもダージリンティーを名乗ることができるのです。禁止されていない以上、仕方ありません。しかし、ダージリン産100%だと誤認してしまうのも事実です。しっかりと、どこ産の茶葉が使われているか確認するしかないですね…。
一方で、完全なダージリン産のものには二種類あります。
①ダージリン産の茶葉のブレンド
ダージリンで生産された茶葉のみをブレンドしたものです。ブレンドの仕方は様々です。クオリティーシーズンごとにブレンドして、ダージリン・ファーストフラッシュなどとしているものもあれば、すべてのクオリティーシーズンを混ぜたものもあります。ダージリンにおけるブレンドティーともいえるかもしれません。
②茶園ごとの茶葉
ダージリンには80以上の茶園がありますが、多くの茶園がブランド化されています。もちろん、ブレンド用のみで出荷しているところもあります。茶園ごととなると、3つのクオリティーシーズンごとに分けて販売されていることがほとんどです。同じダージリンと言っても、もちろん、クオリティーシーズンごとにある程度の類似性はありますが、茶園ごとに栽培しているチャノキの品種は異なっていますし、立地が異なっている以上風味も全く違ったものになります。さらに、オーガニックの茶園も多く存在しており複雑です。ウイスキーのシングルモルトの様に様々な周囲があり、奥が深いです…。
4.ダージリンの茶葉の等級
紅茶の基本で書いた茶葉の等級が基本になっているが、ダージリンになると非常に等級表示が長いものが増えてきます。ダージリンのブランド化された茶園のものであると、フルリーフがほとんどになるので、より細かいランク分けがなされているということです。パット見ただけでは意味が分からないものばかりなので、解説していきます。
まずは、FOP(フラワリー・オレンジ・ペコー)が基本になります。茶葉の呼び方と等級について解説したところで、一番新芽を多く含むとされるものでしたね。ここに、いろいろな修飾がついて行きます。この修飾はFOPの前へ前へとついて行くのでご注意ください。
この上にまずつくのが”G”です。これはGolden(ゴールデン)の略で、お茶の水色が美しい金色を示すという意味があると同時に、ゴールデンチップと呼ばれる,新芽が紅茶の色によって黄金色に染まったもの多く含まれることを意味します。ここまででGFOPとなります。
次につくのが”T”、Tippy(ティッピー)です。これはチップ/ティップ、つまり新芽が多いことを意味します。ここまででTGFOPとなりますが、インド政府が公認しているのはここまでです。これ以上は茶園やバイヤーの判断によるものになるので、明確な基準はわからなくなります。
次につくのが”F”、Fine(ファイン)です。Fは位置によって本当にいろいろな意味になります。ここではFineですから、TGFOPのなかでも質のいいものといった意味です。ゴールデンチップの量が多くなると質のいいものとなります。ここまででFTGFOPとなります。
最後に”S”がよくつきますが、これに関しては意味が確定していないかもしれません。Wikipediaでは”Silver”の略で、シルバーチップと呼ばれる新芽を乾燥させたものからなるものとしていますが、果たしてそうなのでしょうか?シルバーチップもゴールデンチップもチップ/新芽の状態を指すものです。そして、”G”が入った時点でゴールデンチップが多いわけですから、シルバーチップは逆に少なくなるのではないでしょうか?事実、これをSilverの略ではなくSuperの略だと解説しているところもあります。どちらが正しいのか、等級を付けた人によって違うのか、わからないです。ですので、SFTGFOPはFTGFOPの中でも質のいいもの程度に思っておくのがいいかもしれません。
ということで、これらをランクの高い順に並べるとこうなります。
SFTGFOP – FTGFOP – TGFOP – GFOP – FOP (– OP…)
ちなみに、FTGFOP以上になると末尾に”1”がつくこともあります。これは1st(ファースト)を意味しこのランクの中でも質がいいという意味になりますが、正直このくらい高いランクではついていようがいまいが変わらないと考えてもいいでしょう…。
5.ダージリンの茶園一覧
ダージリンの茶園はこのようになっています。
(http://www.dharmasala.cz/wp/za-horami-a-cajem-2/ 及び https://otonaninareru.net/darjeeling-87tea-gardens/ より)
一般的にダージリンの茶園は87と言われていますが、よくよく調べていくとどうやらそれ以上ありそうです。もしかすると、広義には同じ茶園であるのに別々に数えられているものもあるかもしれません。ここは後々詳しく調べていきたいところです…。
しかし、本当に様々な茶園があります。ブランド化された茶園はほぼすべてが有名です。有名でないものがないレベルですね。いずれまた別の記事にしようと思います。
おわりに
文字ばかりになってしまいましたが、ダージリンについての理解は深まったでしょうか?名前が知れた産地ではありますが、奥の深い産地でもあります。単一茶園のものとなるとどうしても値段が張ってしまうのが難点ですが、その分美味しいものがたくさんあります。ぜひ飲んでみてください!
紅茶の基本
みなさん紅茶は飲まれますか?紅茶といってもいろいろとありますよね。有名なものだと、ダージリン、アッサム、アールグレイ、アップルティー、あとはイングリッシュ・ブレクファストなどでしょうか。ですが、どれがどんなものなんでしょう?今回はそうした紅茶の基本について説明していきます。
1.紅茶とは?
お茶には、緑茶やウーロン茶、紅茶、白茶、プアール茶など様々な種類がありますが、すべて同じお茶の木、チャノキの葉っぱから作られます。製造工程の違いによって違うものに分かれていくのです。紅茶もその中の一種です。
中国茶では、チャノキの葉のみから作られるものは緑茶、白茶、黄茶、青茶、紅茶、黒茶の6種類に区別されます。紅茶はその中でも、収穫後に茶葉をもみ込むことによって細胞壁を壊し、茶葉の持つ酵素によって発酵させた、完全発酵茶です。ここでの発酵というのは茶葉自身の持つ酵素由来で、微生物によるものではないので、厳密には発酵ではなく酵素によるただの分解です。しかし、歴史的に発酵と言ってきたのでそのままになってます。この紅茶の基準は世界中に適応できるものです。
ここまで言うと他のものはどう違うのか気になると思うので、簡単に解説します。
緑茶は、摘んだ後すぐに熱を加えること(殺青)で酵素を働かなくしたお茶です。そのため不発酵茶と分類されます。日本では蒸気で熱を加えますが、中国では釜炒りなので風味が違います。
白茶はほぼ自然乾燥のみで作られます。そのため弱発酵茶となります。茶葉の裏に生えている白い産毛が名前の由来です。簡単であるからこそ、品質管理の難しいお茶でもあります。
黄茶は、高温多湿の場所に置いて行われる悶黄と呼ばれる後発酵が特徴の弱後発酵茶です。貴重すぎてほとんど見かけることはできないですし、ものすごく高いです…。
青茶は茶葉の発行を途中で止めた半発酵茶です。茶葉が発酵過程で銀青色になるためこう呼ばれるそうです。ウーロン茶がここに分類されます。
黒茶は麹菌によって数か月以上の本当の発酵を施した後発酵茶です。色が褐色から黒色であるためこの名前です。プアール茶はここに入ります。
それぞれ掘り下げていくと面白いのですが、沼は深いですよ…。
ところで、同じお茶でも麦茶やそば茶、ルイボスティー、ハーブティーなどは茶葉を使っていないので厳密にはお茶ではなく、茶外茶ともいわれます。
2.紅茶の種類
さて、紅茶にも種類があります。産地とか銘柄ではなく、その一段階上の分類です。ほとんど開設されているところを見ませんが、ここをわかっておくことは非常に大事です!
一般的に紅茶と言われるものには3種類あります。
この3種類のなかで、③フレーバーティーだけは毛色が違うものになります。それぞれについてもう少し具体的にみていきましょう。
①オリジンティーorピュアティー
ダージリンやアッサム、ニルギリ、ウバ、キームンなどがここに含まれます。こうした呼び方をされることはほとんどないのでわかりにくいですが、「ある地域でとれた茶葉のみを使用したお茶」をこう呼びます。香りづけもされず、純粋に茶葉の味が楽しめます。ある地域のもののみが混ぜられているので、その地域の特徴がわかりやすいです。
ここに茶園まで加わってくることもあります。それらはシングルオリジンティーとも呼ばれます。ウイスキーでいうシングルモルトみたいなものですね。茶園によって同じ地域でも差が出るので、かなり面白いです。
②ブレンドティー
イングリッシュ・ブレクファストやアフタヌーンなどがここに該当します。いくつかの地域の茶葉を混ぜ合わせたもので、それぞれの会社がイメージに合った茶葉をブレンドして作ります。
実はセイロンティーとして売られているものも、ブレンドティーに含めることができます。セイロンはスリランカのことですが、茶葉の栽培においてはいくつかの地域に分けられます。それらの地域はすべて特徴が異なり、それらを混ぜ合わせているため、ブレンドティーと言うことができます。
③フレーバーティー
一般によく知られるアールグレイやアップルティーなどはここに該当します。フレーバーティーにはいくつかあり、オイルで香りづけしたもの、果物やハーブ,花などを混ぜたもの、そして茶葉に香りを吸わせて着香したものがあります。基本的に、茶葉に香りを吸わせるものが一番手間と時間がかかるのでお高くなります。
有名なアールグレイは、ベルガモットと呼ばれる柑橘類のエッセンシャルオイルで香りづけしたものです。アップルティーは会社によって違いますが、基本的にはリンゴが入っているものが多いでしょう。
ここでベースとなる茶葉は、会社ごとブランドごと銘柄ごとに好きに選ばれます。単一農園のものでも、単一地域のものでも、複数の地域のものを混ぜ合わせたものでも何でもオッケーです。そのため、同じ名前がついていても風味が大きく異なることがあります。
3.茶葉の産地とチャノキの種類
大きくは、熱帯から温帯の暖かい地域ならどこでも原料のチャノキは育つので、様々な生産地があります。しかし、お茶の原産地は中国の南部、雲南省やミャンマーとの境界あたりと考えられており、そこには樹齢3200年以上と考えられるものも存在している。そして、お茶の文化が発達したのは中国であり、それが伝えられたイギリスの植民地となったインドでも栽培が始まったため、中国南部からインドに有名な産地は集中しています。
紅茶の産地としては、中国では祁門(キーマン、キームン)や、雲南省(ユンナン)が有名です。インドでは、ダージリンやアッサム、ニルギリなど。スリランカは昔の名前から茶葉の産地名としてセイロンが使われますが、ここではウバやディンブラ、ヌワラエリアなどがあります。
ところでチャノキは大きく分けて2種類あります。葉が6~9cmと小さい中国種と、12~15cmの大きいアッサム種です。アッサム種はタンニンが多く、渋みも強いのが特徴です。基本的に、暑くて湿度の高いところではアッサム種、それ以外では中国種が植えられていますが、現在では交配種も存在しています。これに関しては、茶園ごとにどちらを植えるのか違っているため、どこにどちらが植わっているというのはわかりません。両方栽培しているところも多いです。
ちなみに、挿し木によって遺伝子情報が全く同じクローンが作られますが、これによって育てられたことをクローナルと言います。中国種とアッサム種の交配の中からそうして選定されて増やされたものを「クローナル種」と書いたりしますが、交配によってできるのは一種類であるわけがないので、クローナル種と書いてあっても同じものではないことにご注意ください。
4.茶葉の等級
たまにお茶の銘柄についている、「オレンジ・ペコ」とかいうやつ、あれが茶葉の等級になります。決してオレンジの香りがするわけではありません!間違えませんように!
基本的に、茶葉の等級は茶葉の位置に由来する呼び方から来ています。まずはそこを抑えましょう。
FOP: フラワリー・オレンジ・ペコー。先端の新芽/芯芽、つまり一枚目の葉を指す。
OP: オレンジ・ペコー。先端から2枚目の葉。開ききっていないのでねじれている。
P: ペコー。先端から3枚目の葉。ここまでで一芯二葉となる。
PS: ペコー・スーチョン。先端から4枚目の葉まだフルサイズではない。
S: スーチョン。先端から5枚目でほぼフルサイズ。ラプサンスーチョンに使われる。
これらをもとに、フルリーフ、つまり茶葉そのままの場合は一番多いものによって等級が設定されます。等級の名前は茶葉の名前と同じです。FOPにはTGFOPやFTGFOP、SFTGFOPなどとランクアップしますが、ダージリン以外ではほぼ見かけませんね。
この等級の前にBがつくと、それはブロークン、つまりカットされたものであることを意味します。カットされるとその分抽出時間も短くて済みます。さらに、FOPやその進化系以外でFが出てくると、それはファニングスと言って、ブロークン(B)よりもさらに細かくふるいにかけたものなどを指します。どんどん細かくなるので、抽出時間がさらに短くなります。一方で、ブロークン(B)やファニングス(F)と細かくなると、ティーバッグやストレーナー(茶こし)をすり抜けてしまうものも多くなっていき、粉っぽくなりやすいデメリットがあります。
ところで、アッサムにはCTCと呼ばれるグレード的なものがあります。これは実はCTC(Crush Tear Curl)製法というもので、つぶして引き裂いて粒に丸めたものです。短時間で一気に抽出できるので非常に普及しています。
おわりに
だいたい基本としてはここまでです、これでも十分細かいですが。緑茶との違い、紅茶の種類、主な産地を知っていれば大丈夫です。茶葉の等級についても一応説明しましたが、はっきり言って初歩で必要かは微妙です…。ただ、FOPやOP、CTCなどは覚えておいた方が茶葉を選ぶときに役立つので覚えておいて損はないです。