紅茶の基本
みなさん紅茶は飲まれますか?紅茶といってもいろいろとありますよね。有名なものだと、ダージリン、アッサム、アールグレイ、アップルティー、あとはイングリッシュ・ブレクファストなどでしょうか。ですが、どれがどんなものなんでしょう?今回はそうした紅茶の基本について説明していきます。
1.紅茶とは?
お茶には、緑茶やウーロン茶、紅茶、白茶、プアール茶など様々な種類がありますが、すべて同じお茶の木、チャノキの葉っぱから作られます。製造工程の違いによって違うものに分かれていくのです。紅茶もその中の一種です。
中国茶では、チャノキの葉のみから作られるものは緑茶、白茶、黄茶、青茶、紅茶、黒茶の6種類に区別されます。紅茶はその中でも、収穫後に茶葉をもみ込むことによって細胞壁を壊し、茶葉の持つ酵素によって発酵させた、完全発酵茶です。ここでの発酵というのは茶葉自身の持つ酵素由来で、微生物によるものではないので、厳密には発酵ではなく酵素によるただの分解です。しかし、歴史的に発酵と言ってきたのでそのままになってます。この紅茶の基準は世界中に適応できるものです。
ここまで言うと他のものはどう違うのか気になると思うので、簡単に解説します。
緑茶は、摘んだ後すぐに熱を加えること(殺青)で酵素を働かなくしたお茶です。そのため不発酵茶と分類されます。日本では蒸気で熱を加えますが、中国では釜炒りなので風味が違います。
白茶はほぼ自然乾燥のみで作られます。そのため弱発酵茶となります。茶葉の裏に生えている白い産毛が名前の由来です。簡単であるからこそ、品質管理の難しいお茶でもあります。
黄茶は、高温多湿の場所に置いて行われる悶黄と呼ばれる後発酵が特徴の弱後発酵茶です。貴重すぎてほとんど見かけることはできないですし、ものすごく高いです…。
青茶は茶葉の発行を途中で止めた半発酵茶です。茶葉が発酵過程で銀青色になるためこう呼ばれるそうです。ウーロン茶がここに分類されます。
黒茶は麹菌によって数か月以上の本当の発酵を施した後発酵茶です。色が褐色から黒色であるためこの名前です。プアール茶はここに入ります。
それぞれ掘り下げていくと面白いのですが、沼は深いですよ…。
ところで、同じお茶でも麦茶やそば茶、ルイボスティー、ハーブティーなどは茶葉を使っていないので厳密にはお茶ではなく、茶外茶ともいわれます。
2.紅茶の種類
さて、紅茶にも種類があります。産地とか銘柄ではなく、その一段階上の分類です。ほとんど開設されているところを見ませんが、ここをわかっておくことは非常に大事です!
一般的に紅茶と言われるものには3種類あります。
この3種類のなかで、③フレーバーティーだけは毛色が違うものになります。それぞれについてもう少し具体的にみていきましょう。
①オリジンティーorピュアティー
ダージリンやアッサム、ニルギリ、ウバ、キームンなどがここに含まれます。こうした呼び方をされることはほとんどないのでわかりにくいですが、「ある地域でとれた茶葉のみを使用したお茶」をこう呼びます。香りづけもされず、純粋に茶葉の味が楽しめます。ある地域のもののみが混ぜられているので、その地域の特徴がわかりやすいです。
ここに茶園まで加わってくることもあります。それらはシングルオリジンティーとも呼ばれます。ウイスキーでいうシングルモルトみたいなものですね。茶園によって同じ地域でも差が出るので、かなり面白いです。
②ブレンドティー
イングリッシュ・ブレクファストやアフタヌーンなどがここに該当します。いくつかの地域の茶葉を混ぜ合わせたもので、それぞれの会社がイメージに合った茶葉をブレンドして作ります。
実はセイロンティーとして売られているものも、ブレンドティーに含めることができます。セイロンはスリランカのことですが、茶葉の栽培においてはいくつかの地域に分けられます。それらの地域はすべて特徴が異なり、それらを混ぜ合わせているため、ブレンドティーと言うことができます。
③フレーバーティー
一般によく知られるアールグレイやアップルティーなどはここに該当します。フレーバーティーにはいくつかあり、オイルで香りづけしたもの、果物やハーブ,花などを混ぜたもの、そして茶葉に香りを吸わせて着香したものがあります。基本的に、茶葉に香りを吸わせるものが一番手間と時間がかかるのでお高くなります。
有名なアールグレイは、ベルガモットと呼ばれる柑橘類のエッセンシャルオイルで香りづけしたものです。アップルティーは会社によって違いますが、基本的にはリンゴが入っているものが多いでしょう。
ここでベースとなる茶葉は、会社ごとブランドごと銘柄ごとに好きに選ばれます。単一農園のものでも、単一地域のものでも、複数の地域のものを混ぜ合わせたものでも何でもオッケーです。そのため、同じ名前がついていても風味が大きく異なることがあります。
3.茶葉の産地とチャノキの種類
大きくは、熱帯から温帯の暖かい地域ならどこでも原料のチャノキは育つので、様々な生産地があります。しかし、お茶の原産地は中国の南部、雲南省やミャンマーとの境界あたりと考えられており、そこには樹齢3200年以上と考えられるものも存在している。そして、お茶の文化が発達したのは中国であり、それが伝えられたイギリスの植民地となったインドでも栽培が始まったため、中国南部からインドに有名な産地は集中しています。
紅茶の産地としては、中国では祁門(キーマン、キームン)や、雲南省(ユンナン)が有名です。インドでは、ダージリンやアッサム、ニルギリなど。スリランカは昔の名前から茶葉の産地名としてセイロンが使われますが、ここではウバやディンブラ、ヌワラエリアなどがあります。
ところでチャノキは大きく分けて2種類あります。葉が6~9cmと小さい中国種と、12~15cmの大きいアッサム種です。アッサム種はタンニンが多く、渋みも強いのが特徴です。基本的に、暑くて湿度の高いところではアッサム種、それ以外では中国種が植えられていますが、現在では交配種も存在しています。これに関しては、茶園ごとにどちらを植えるのか違っているため、どこにどちらが植わっているというのはわかりません。両方栽培しているところも多いです。
ちなみに、挿し木によって遺伝子情報が全く同じクローンが作られますが、これによって育てられたことをクローナルと言います。中国種とアッサム種の交配の中からそうして選定されて増やされたものを「クローナル種」と書いたりしますが、交配によってできるのは一種類であるわけがないので、クローナル種と書いてあっても同じものではないことにご注意ください。
4.茶葉の等級
たまにお茶の銘柄についている、「オレンジ・ペコ」とかいうやつ、あれが茶葉の等級になります。決してオレンジの香りがするわけではありません!間違えませんように!
基本的に、茶葉の等級は茶葉の位置に由来する呼び方から来ています。まずはそこを抑えましょう。
FOP: フラワリー・オレンジ・ペコー。先端の新芽/芯芽、つまり一枚目の葉を指す。
OP: オレンジ・ペコー。先端から2枚目の葉。開ききっていないのでねじれている。
P: ペコー。先端から3枚目の葉。ここまでで一芯二葉となる。
PS: ペコー・スーチョン。先端から4枚目の葉まだフルサイズではない。
S: スーチョン。先端から5枚目でほぼフルサイズ。ラプサンスーチョンに使われる。
これらをもとに、フルリーフ、つまり茶葉そのままの場合は一番多いものによって等級が設定されます。等級の名前は茶葉の名前と同じです。FOPにはTGFOPやFTGFOP、SFTGFOPなどとランクアップしますが、ダージリン以外ではほぼ見かけませんね。
この等級の前にBがつくと、それはブロークン、つまりカットされたものであることを意味します。カットされるとその分抽出時間も短くて済みます。さらに、FOPやその進化系以外でFが出てくると、それはファニングスと言って、ブロークン(B)よりもさらに細かくふるいにかけたものなどを指します。どんどん細かくなるので、抽出時間がさらに短くなります。一方で、ブロークン(B)やファニングス(F)と細かくなると、ティーバッグやストレーナー(茶こし)をすり抜けてしまうものも多くなっていき、粉っぽくなりやすいデメリットがあります。
ところで、アッサムにはCTCと呼ばれるグレード的なものがあります。これは実はCTC(Crush Tear Curl)製法というもので、つぶして引き裂いて粒に丸めたものです。短時間で一気に抽出できるので非常に普及しています。
おわりに
だいたい基本としてはここまでです、これでも十分細かいですが。緑茶との違い、紅茶の種類、主な産地を知っていれば大丈夫です。茶葉の等級についても一応説明しましたが、はっきり言って初歩で必要かは微妙です…。ただ、FOPやOP、CTCなどは覚えておいた方が茶葉を選ぶときに役立つので覚えておいて損はないです。