私のテイスティング法 ~第一章 テイスティングの動作~
数回にかけて、普段ウイスキーやブランデーを飲むときに、どのようにテイスティングしているのかをまとめようと思います。
基本的にはお酒、特に蒸留酒のテイスティングのやり方ですが、お茶に関してもこれに準じてやっています。
最初の今回はテイスティング中の動作についてです。
0. 4段階にわける
動作、と言っても、それ以前にどのように分けてコメントを書いているのかがわからないと解説のしようがありませんね。
私は具体的な普段テイスティングをする際、対象がなんであれ、4段階を基本にしてます。その4段階はこうです。
① 香り
② 味
③ フィニッシュ(鼻に抜ける香り)
④ 感想
まとめるときは、基本この4つでやることにしています。
ただ、厳密に言うと、2. 味 は口のなかでの味と、飲み込んでから口に残る味にわけているので、5段階とも言えるかもしれません。
4の感想については、テイスティングで感じられたものの付録的な事で、実際のテイスティングとは関係ないので、のちのち説明します。
ですので、今回は1.香り、2.味、3.フィニッシュの分析の際の動作についてです。
1. 香り
ここでいう香りとは、グラスでの香りです。
ストレートやTwice Up、その他テイスティンググラスで常温の場合、グラスを傾けて一周ぐるりと液体をゆっくり回します。
この方が香りが立ちやすいのです。グラスの表面についたところからも揮発していくので、より香り成分が多く感じられるようになるんですね。
ぐしゃぐしゃ回すという手もありますが、後述の理由から液面はあまり揺らしたくないので、そうはしません。
もちろん、これをやらないで嗅ぐというのもありです。あくまで私はです。
a.遠くからの香り?
遠くからでも感じとれる香りは、無理に感じ取ろうとはしません。
グラスに注いで放置しているのに漂って来るくらい強い場合のみ、記載するようにしてます。
わざわざ遠くから嗅いでも、あんまり感じとれないことが多いんですよね。
たしかに一般的には、遠くからと近くからで違う、とか言われたりします。でも、その遠くってどれくらいなんでしょう?
スマホを手に持ってるときの画面くらい離れてでしょうか?それとも手を伸ばしたときくらいでしょうか?
基準が明確じゃないんですよね。ですので、個人として楽しむのはありだと思いますが、コメントとして残すには再現性が低そうです…。
一方で、漂ってくるのなら、どこに置いたとしても漂ってくるくらい強いわけですから、基準もなにもありません。感じたままを書いたとしても、他の人も他のシチュエーションでも感じとれる可能性が高いでしょう。
ですので、そういうものだけ書きます。
b.近くでの香り
近く、といってもグラスに鼻を突っ込んではいけません。ぼくもたまにやってしまうのですが、最悪です…。
グラスに鼻を突っ込むと、グラス内の湿度がより上がってしまいます。そして香りの開きかたが変わります。さらに、この癖がつくと、バーでも出てしまいます。最悪ですね、やめましょう。
グラスからすぐの位置で嗅ぎます。
吐いた鼻息が絶対にグラスのなかに入らないように、そしてなるべく液面を動かさないように注意します。
鼻息が入ってしまうと、グラス内の湿度が上昇したり、息のスピードで液面を揺らしたり、グラス内の二酸化炭素量が増えたり…。様々な要因で香りが変わってしまいます。
そして、液面を動かすと、空気に触れて開いてきた表面が崩れて、中に戻ってしまいます。こうして、また開いてない液体が上に出てきてしまい、いつまでたっても開いていない香りしか出てこなくなります。
なるべく開かせた方が、その液体のすべてを発揮できるようになるので、なるべく動かさないようにしています。
それならよく回して全体を開かせれば…というかもしれませんが、そんな簡単には開きません。すると、むしろ液面を維持し続けた方が、しっかりと開いた香りを嗅ぐことができると思うのです。
もちろんここでいう開くというのは、開栓後時間が経つことによって開くのとは違います。それが「先天的な」ものだとたとえると、このグラス内の液面でどれだけ開くのかというのは「後天的な」ものと言えるかもしれません。
これは、どちらも開く状況が異なっているので、グラスで開いたら瓶内で開いたある時点と同じというわけにはいかないと思います。
+αの分析
普通に嗅いで感じ取るだけでたいていは終わります。
しかし、香りが弱かったり、なにかよくわからない香りがあるときは分析を続けるために、嗅ぎ方を変えていきます。鼻の中の香りを感じる位置に注意するのです。
まずは小鼻のあたりで、次に鼻の奥でという感じです。こうすると、新たな香りを発見できたり、正確に分析できたりします。
2. 味
①口の中での味
口に含んだら、まずはそれを分析します。
あえて舌は全く動かさず、空気も含まず、口に入れた瞬間をキープします。
口の中でぐるぐるとまわしてしまうと、普段飲むときとは違う味を感じ取ってしまったり、アルコール感を急に強く感じてしまったりという問題があるので僕はやりません。
ポテンシャルの把握としてはありだと思います。
事実、舌の場所によって感じる味は違いますから、口の中で液体を回すことでそこにいきわたらせることもできます。そうして、いろいろな成分を感じ取るのもいいと思います。
しかし、それをやると唾液がより分泌されやすくなって味は変わらないのか、という不安があります。口に入れた瞬間をキープするのは、それをなるべく避けたいというのもあるのです。
さて、時間経過とともにアルコールの辛さが来るので、それまでの勝負です。
素早く分析してメモしていきます。
②飲み込んでからの味
これは人によってはフィニッシュにしてしまっていたり、逆にフィニッシュをこことまとめてしまっていたり、あるいは両者まとめて「余韻」言ったりと、かなりばらつきのあるところです。
ですが、味はむしろここからが本番だと思います。飲み込んでからは、時間経過とともに感じられる味は大きく変化していきます。といっても、その間10秒にも似たないかもしれません。しかし、その10秒がそれの評価を決めてしまう、それほど大事であると思うのです。
というか、みなさんここを楽しんでいると思うのですが…違いました?
さて、ここはまさに時間との戦いです。メモしている瞬間にも感じる風味は変わってきます。
ですので、より時間経過での変化を詳しく説明するように書いていきます。
飲み込んだ瞬間の味、少し経って現れる味、そしてどのように舌からその味はいなくなっていくのか…。
すべてが大切だと思います。
ですので、飲み込む瞬間に覚悟を決めた方がいいかもしれません(笑)
※2口目はだめなのか?
そんなに1口目でやらずに、わからなければ2口目でやればいいじゃん、と思うかもしれません。
ですが、2口目はその味に慣れたうえで感じる味なのです。明らかに感じられる味は変わってきます。先ほど飲んでいる間にも、それを再確認しました。
慣れた方が分析は正確になるのでは?と思うでしょう。
これはもしかすると僕だけかもしれませんが、慣れてしまうと細部に気付かなくなります。舌が新鮮ではない、という言い方がいいのかもしれません。
慣れてしまうと、その味は直前に感じた記憶が残った状態で感じているものです。
ですから、慣れる前には感じられる「異質さ」や「繊細な味」は意識からなくなり、その味の中で強烈だった部分が強調されてしまう気がするのです。
一口目のアルコールによって、舌が若干マヒした状態になってしまっていることも理由として挙げられるかもしれません。
また、一口目でしっかりと分析できれば、一杯の中で分析に使わずに純粋に楽しめる時間が増えます。
ですから、なるべく1口目でこの味での分析は終わらせたいのです。
3. フィニッシュ(鼻で感じる香り)
これは、1口目で味に集中しているため、2口目にするしかありません。
ですが、経験的にあまり変化があるようには思えないのです。おそらく、胃から登ってくる香りや、のどや口に残った成分から登ってくる香りなので、あまり変化がないのでしょう…(確証も自信もないですが)
しかし、これも意外と早く消えてしまうものが多いです。ですから、なるべく早く分析を終了したいです。
鼻から軽く息を吐いて、吐く息の中に混ざっている香りを感じます。
もちろん、一番液体が残っているのは口の中ですから、飲み込んだ後の味と近い香りではあります。
ですので、鼻の奥で感じているのか、舌で感じているのかは明確に分けなければなりません。
慣れない人には少し訓練が必要かもしれませんが、息を吐きながら鼻の奥に神経を集中させる。こうして感じ取っていきます。
また、飲み込んだ後の味と同様、どれくらい早く消えていくのかも重要なポイントです。余韻の長さと直結するところなので、そういった意味で非常に大事です。
おわりに
さて、今回はテイスティング最中の動作についてまとめました。
次回はこの作業をしている間、頭では何を考えているのか、という実際の分析中の施行についてです。
お楽しみに!
次回の記事はこちらです!