Saitoの沼通信

Saitoの沼通信

とある若者が趣味のことを語る場所。Twitterでは文字数が足りないようなことが中心。 クラシック音楽、ウイスキー、カクテル、紅茶などが好き。

ダージリンについて

紅茶の産地には様々な場所があります。インドは紅茶の生産量が世界一ですが、ダージリンはその中でも非常に有名な産地です。そのダージリンについて解説していきます。

 

 

1.ダージリンの場所と気候

ダージリンと呼ばれる地域は、インド西ベンガル州の最北端にあります。わからないと思うので地図を見ましょう。下のインド全図のうち、赤くなっているのが西ベンガル州です。そして、そこの拡大図で、赤く囲った地域がダージリン一帯になります。すぐ西はネパールになり、東も少し行けばブータンに出てしまう、なんとも複雑な位置にあります。

f:id:Saito_numa:20200705034731p:plain

インド全図

f:id:Saito_numa:20200705034551p:plain

西ベンガル州

(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A5%BF%E3%83%99%E3%83%B3%E3%82%AC%E3%83%AB%E5%B7%9E の画像をもとに編集)


また、ここはすでにヒマラヤ山脈の一部であり、地域の平均の標高は2000mを超えます。そのため冷涼な気候で、朝晩には霧が発生します。しかし、冬に0度を下回ることがなく降雪がないため、お茶の栽培に適しています。この独特な気候が中国の茶の生産地と似ていたため、それを見込んで、イギリス植民地時代に茶の栽培が開始されました。そのため、中国種がもともと多い地域でもあります。

こうした地域に、合計で80以上の茶園が存在しています。

 

2.クオリティーシーズン

ダージリンに限らずですが、クオリティーシーズンと呼ばれる旬の時期があります。ダージリンではこれが年に三回あります。3~4月など春に摘まれたものをファースト・フラッシュ、5~6月など夏に摘まれたものをセカンド・フラッシュ、10~11月など秋に摘まれたものをオータムナルと呼びます。

 

①ファースト・フラッシュ

3~4月頃に収穫される、いわゆる一番茶です。春摘みとも呼ばれます。この時期はまだ涼しいため発酵がなかなか進まず、茶葉も緑のままのものが多くなります。そのため、水色も淡い黄色や淡いオレンジ色になります。ある意味では薄い紅茶ですが、逆にそのフレッシュさ/若々しさが魅力でもあります。一番緑茶に近いダージリンの紅茶と言えるかもしれません。

 

②セカンド・フラッシュ

5~6月に収穫される二番茶で、夏摘みとも呼ばれます。この時期には昆虫による食害や乾燥などからストレスを受け、そのおかげでダージリン特有の独特の風味を生み出します。マスカテル・フレーバーという、マスカットのような香りがすると表現されることがありますが、これは非常にあいまいな表現です。たしかにマスカットのようなみずみずしい酸味を伴った香りがすることもありますが、それがすべてのセカンド・フラッシュで感じられるわけではありません。ないからと言ってダージリンの良さがなくなるわけではないので、この用語に惑わされる必要はありません。

 

オータムナル

10~11月など秋も深まったころに収穫されます。モンスーン(季節風)によるたくさんの雨と夏の日照により、たくさんの栄養を蓄えた時期であるため、非常に深みのある味わいになります。収穫時期が遅い分、このように茶園の気候の影響を最も色濃く反映しており、その茶園の特徴が最大限発揮されたものでもあります。水色も3つのクオリティーシーズンの中で最も濃いものとなります。一方で、香りは穏やかになります。また、この時期になると生産しない茶園も多いため、実は希少かもしれません。

 

3.ダージリンの紅茶?

本当にダージリン

ダージリンと名の付く紅茶はたくさん販売されています。しかし、ダージリン産の紅茶はインド産の1パーセント程度…。明らかに足りません。これにはダージリンと名乗れる基準が関係してきます。
実は、ダージリン産の茶葉とその他の産地の茶葉をブレンドしたものダージリンティーを名乗ることができるのです。禁止されていない以上、仕方ありません。しかし、ダージリン産100%だと誤認してしまうのも事実です。しっかりと、どこ産の茶葉が使われているか確認するしかないですね…。
一方で、完全なダージリン産のものには二種類あります。

 

ダージリン産の茶葉のブレンド

ダージリンで生産された茶葉のみをブレンドしたものです。ブレンドの仕方は様々です。クオリティーシーズンごとにブレンドして、ダージリン・ファーストフラッシュなどとしているものもあれば、すべてのクオリティーシーズンを混ぜたものもあります。ダージリンにおけるブレンドティーともいえるかもしれません。

 

②茶園ごとの茶葉

ダージリンには80以上の茶園がありますが、多くの茶園がブランド化されています。もちろん、ブレンド用のみで出荷しているところもあります。茶園ごととなると、3つのクオリティーシーズンごとに分けて販売されていることがほとんどです。同じダージリンと言っても、もちろん、クオリティーシーズンごとにある程度の類似性はありますが、茶園ごとに栽培しているチャノキの品種は異なっていますし、立地が異なっている以上風味も全く違ったものになります。さらに、オーガニックの茶園も多く存在しており複雑です。ウイスキーシングルモルトの様に様々な周囲があり、奥が深いです…。

 

4.ダージリンの茶葉の等級

紅茶の基本で書いた茶葉の等級が基本になっているが、ダージリンになると非常に等級表示が長いものが増えてきます。ダージリンのブランド化された茶園のものであると、フルリーフがほとんどになるので、より細かいランク分けがなされているということです。パット見ただけでは意味が分からないものばかりなので、解説していきます。
まずは、FOP(フラワリー・オレンジ・ペコー)が基本になります。茶葉の呼び方と等級について解説したところで、一番新芽を多く含むとされるものでしたね。ここに、いろいろな修飾がついて行きます。この修飾はFOPの前へ前へとついて行くのでご注意ください。
この上にまずつくのが”G”です。これはGolden(ゴールデン)の略で、お茶の水色が美しい金色を示すという意味があると同時に、ゴールデンチップと呼ばれる,新芽が紅茶の色によって黄金色に染まったもの多く含まれることを意味します。ここまででGFOPとなります。
次につくのが”T”、Tippy(ティッピー)です。これはチップ/ティップ、つまり新芽が多いことを意味します。ここまででTGFOPとなりますが、インド政府が公認しているのはここまでです。これ以上は茶園やバイヤーの判断によるものになるので、明確な基準はわからなくなります。
次につくのが”F”、Fine(ファイン)です。Fは位置によって本当にいろいろな意味になります。ここではFineですから、TGFOPのなかでも質のいいものといった意味です。ゴールデンチップの量が多くなると質のいいものとなります。ここまででFTGFOPとなります。
最後に”S”がよくつきますが、これに関しては意味が確定していないかもしれません。Wikipediaでは”Silver”の略で、シルバーチップと呼ばれる新芽を乾燥させたものからなるものとしていますが、果たしてそうなのでしょうか?シルバーチップもゴールデンチップもチップ/新芽の状態を指すものです。そして、”G”が入った時点でゴールデンチップが多いわけですから、シルバーチップは逆に少なくなるのではないでしょうか?事実、これをSilverの略ではなくSuperの略だと解説しているところもあります。どちらが正しいのか、等級を付けた人によって違うのか、わからないです。ですので、SFTGFOPはFTGFOPの中でも質のいいもの程度に思っておくのがいいかもしれません。
ということで、これらをランクの高い順に並べるとこうなります。

 

SFTGFOP – FTGFOP – TGFOP – GFOP – FOP (– OP…)

 

ちなみに、FTGFOP以上になると末尾に”1”がつくこともあります。これは1st(ファースト)を意味しこのランクの中でも質がいいという意味になりますが、正直このくらい高いランクではついていようがいまいが変わらないと考えてもいいでしょう…。

 

5.ダージリンの茶園一覧 

ダージリンの茶園はこのようになっています。

f:id:Saito_numa:20200705041438g:plain

(http://www.dharmasala.cz/wp/za-horami-a-cajem-2/ 及び https://otonaninareru.net/darjeeling-87tea-gardens/ より)

一般的にダージリンの茶園は87と言われていますが、よくよく調べていくとどうやらそれ以上ありそうです。もしかすると、広義には同じ茶園であるのに別々に数えられているものもあるかもしれません。ここは後々詳しく調べていきたいところです…。
しかし、本当に様々な茶園があります。ブランド化された茶園はほぼすべてが有名です。有名でないものがないレベルですね。いずれまた別の記事にしようと思います。

 

おわりに

文字ばかりになってしまいましたが、ダージリンについての理解は深まったでしょうか?名前が知れた産地ではありますが、奥の深い産地でもあります。単一茶園のものとなるとどうしても値段が張ってしまうのが難点ですが、その分美味しいものがたくさんあります。ぜひ飲んでみてください!