紅茶×ウイスキーの可能性(ティー・ロワイヤル方式)
以前、ティー・ロワイヤルという紅茶×ブランデーの魅力について記事を書きました。その延長で、ブランデーをウイスキーにしたらどうなるのだろうと気になりました。そこで、何度か実験をしてみたので、その成果をまとめます!
※角砂糖を使うので、純粋に紅茶とウイスキーだけではない点、ご了承ください。
1.なぜこのやり方?そして実際どうなの?
今回は、紅茶とウイスキーの合わせ方として、ティー・ロワイヤル方式を選びました。これは、ティー・ロワイヤルをやっていて思いついたからなのですが、アルコールを飛ばせるということが一つキーポイントです。日本人にはお酒、つまりアルコールがダメな人が一定数います。そうした人も、このやり方なら楽しめるからです。
アルコールを摂取せずにウイスキーの香りと味を楽しむことができれば、新たなウイスキーの楽しみ方になるかもしれない、そういう思いもこめてこのやり方にしました。
そして、肝心の結果ですが、かなりいいです。ウイスキーと紅茶の組み合わせはブランデーにも負けないほどおいしいです!
ただし、ブランデーを使用するときと違うのは、ウイスキー自体の香りと味の幅が広い点です。ウイスキーは、アイラ島のもののようなスモーキーさが強いものから、マッカランに代表されるシェリー樽のもの、ジャパニーズに代表されるミズナラ樽や繊細な香りのもの、そしてアメリカのバーボンと振れ幅が大きすぎます。ですので、中にはいいとは言えないウイスキーも存在してしまうのです。
とりあえず、実験をひとつひとつ見ていきましょう。
2.紅茶×ウイスキーの実験
数は少ないですが、何度か実験を行いました。その結果を、すべて書いていきます。茶葉の解説(☆)を軽くしたのちに、ウイスキーと合わせてどうなるか(★)を説明していきます。その時の感覚に基づいているので、一つ一つの長さも解説も違います。まあ、たいてい感動しているときや、残念度が大きいときはは感想が長くなります(笑)
かなり長くなるので、読み飛ばしていただいても結構です。
①茶葉: クスミティー アナスタシア
最初に思い付いたものなので、ウイスキーは一種類でしかやっていません。
☆アスタナシアは、ベルガモット、レモン、ライム、オレンジの花の香りがブレンドされたフレーバードティーです。アールグレイに近いですが、それよりも優しく少し甘いです。
★この組み合わせはかなり良かったです。アナスタシアにあったアールグレイ感が消え、モーレンジ・キンタルバン由来と思われるブラッドオレンジやメロン、ピーチなど、濃いめのフルーツの香りがしました。味も甘みと香辛料のスパイス感を感じ、全く別の紅茶になったように感じるほど変化が大きかったです。
②茶葉: クスミティー サンクトペテルブルク
ウイスキー: ブラントン シングルバレル、グレンドロナック12年、ブナハーブン12年
☆サンクトペテルブルクは、キャラメル、レッドフルーツ、バニラなどの甘い香りが特徴的です。ベースがアールグレイだからか、若干のスパイス感もいます。マリアージュフレールのマルコポーロの優しい版みたいな感じです。系統はかなり似ています。
★まずブラントンですが、ブラントン自身の香りと味がよく紅茶と混ざっています。ただし、悪く言えばブラントンを足しただけのような感じです。相性自体は良く思います。
グレンドロナック12年は面白いです。チョコレートやカカオの風味が新たに紅茶に追加されます。草や低木のようなさわやかな香りと味です。
そして、ブナハーブン12年はこの3つでは一番良かったです。焼きリンゴやカラメル、ブドウなどの香りが追加されますが、やはりアイラ島のウイスキーです。島に染み付いたピート感が出てきてスモーキーさを感じます。
③茶葉: マリアージュフレール アッサム ナホラビ農園
ウイスキー: マッカラン・エニグマ、ジョニーウォーカー・ブラックラベル、ロイヤルハウスホールド
☆ナホラビ農園のアッサムは、スイートポテトのような香りと茶葉自体の甘みがかなりあります。そのため茶葉自体の性格は割と強めです。
★まずはマッカラン・エニグマです。スパニッシュオーク・シェリー樽100%ですが、それがうまく作用してます。ももやプラム,赤ワインなどの香りが加わり、味もマッカラン・エニグマの渋みや苦みが適度に残ってとても美味しくなりました。
次にジョニ黒です。そのまま飲むならコスパ最強ウイスキーのひとつ!なのですが、これになると微妙です。大きな変化があまりありません。ジョニ黒の奥にあるスモーキーさが出てくれるかとも思いましたが、そんなことはないです。ですが、冷えてきたらいいので、アイスティー割りはいけるのかもしれません。
ロイヤルハウスホールドですが、これは大成功です。そのままで少し感じられるスモーキーさが、とてもいい効果を発揮してます。もとの香りともまた違った上品さを感じます。香りはかなり濃厚に変化し、味はコクがありますが控えめです。晴れた日の、イギリス郊外の貴族の館、そうダウントンアビーの世界観みたいな感じです。
④茶葉: マリアージュフレール ダージリン ハッピーヴァレー農園
ウイスキー: ダルユーイン22年1997Signatory、グレンファークラス15年、グレンリベット18年
☆ハッピーヴァレー農園のダージリンは、有機農法をとっていることもあってか、香りはとてもいいですが味が少し薄めです。冷めてくると味もいいのですが…。紅葉の時期を思わせるような、いい意味で少し枯れた感じの落ち着く香りです。
★まず、ダルユーイン22年1997です。これは少し離して嗅ぐと、リンゴやナシ,ももなどのフルーティーな香りが広がります。木の感じもして面白いです。ですが、そこで終わってしまう感じ。ただし、口に入れた瞬間はフルーティーな甘さが最高です。
次に、グレンファークラス15年ですが、このなかでは一番中途半端でした。ファークラスの甘みはしっかりと追加されているのですが、そこだけなのです。他にあまり要素がありません。茶葉とけんかしてしまった感じですかね…。
そしてグレンリベット18年(旧ラベル)です。これは、香りは弱めで若干桃を感じる程度なのですが、味はすごいです。一気に深くなった感じです。うまくダージリンとマッチして、ぐっと深度が増しました。甘みもいやらしくなく、茶葉自体の個性が強化された感じです。
⑤茶葉: トワイニング クオリティー プリンス・オブ・ウェールズ
ウイスキー: ウシュクベ・ストーンフラゴン(Over 210 years表記)、伊達、スプリングバンク15年
☆このプリンス・オブ・ウェールズは、1921年にできたエドワード8世のためのブレンドです。スモーキーな香りとまろやかながらもしっかりとした味が特徴です。ところでこの缶には、茶葉3g熱湯140ml 4分30秒で抽出と書いてあります。それをやるとこんなに濃く、コーヒーのようになりますね…。
★まずウシュクベ・ストーンフラゴンですが、これは完全に失敗です。香りは少し変化したかな?くらいでほぼ入れた意味がありません。味は、逆に苦みが出てしまい、正直ダメです…。
次に伊達です。純粋にいい感じです。ウイスキーと紅茶をしっかりと感じ取れます。ですが、逆に言えば伊達特有の無個性な面が出ているので、感動はないです。ただし、一度に少し多めの量を飲むと、伊達の甘さがしっかりと感じられるのでいいかもしれません。
そして、スプリングバンク15年です。ちゃんとスプリングバンクの個性が出てます。牡蠣のような風味もうまく入り、さらにバンク15年の甘さがうまく出てくれて、とても美味しいです。これは成功ですね。
ウイスキー: 響17年、バルヴェニ―21年・マデイラカスク、ロイヤルロッホナガー・セレクテッドリザーブ
☆フォションのアップルティーは、純粋にセイロン茶×リンゴです。癖もないしとても飲みやすいです。ただしリーフティーの場合、細かく粉砕された茶葉なので、入れた紅茶に茶葉が入るのを気にする場合、かなり面倒です。正直ティーバッグでも…。
★まず、響17年はもったいないですが、相性がかなりいいです。プラムやリンゴ、桃など、非常に香りが華やかになります。味も、響17年の複雑さがしっかりと出ていて感動も大きいです。唯一の欠点は、飲み込んだ後に口にへばりつくような感じが残ることです…。
バルヴェニ―21年マデイラカスクはバランスが一番いいかもしれません。香りは薄いチョコレートの様で少し微妙ですが、味はキャラメルとチョコレートがしっかりと感じられ、そこにアップルティーのリンゴが絡み合ってとても美味しいです。
ロイヤルロッホナガーですが、不思議なことにミントやキシリトールのような、そうした植物のさわやかな香りがします。僕は歯医者さんで嗅いだことがあるような…。ですが非常にいい香りです。味は、カラメルの甘みを感じるのですが、最後に一粒の豆を感じます。この豆はいったい何なのか疑問です。
ウイスキー: グレンリベット12年(旧ラベル)、山崎NA、メーカーズマーク
☆トワイニングはアールグレイの元祖です。ですので、ザ・アールグレイという香りです。そして、これはイギリスの紅茶に共通するのかもしれませんが、なぜかミルクティーのような香りもします。
★まず、グレンリベット12年は、変化が少ないです。冷めてくるとグレンリベット12年のフルーティーさが出てきます。もしかしたら砂糖が少なかったのかもしれません…。
山崎NAは、この中では一番いいです。チョコレートやフルーティーさをかなり感じます。味も複雑で、とてもいいです。もしかすると、ワイン樽が効果を発揮しているのかもしれません。
メーカーズマークは、最初のほうのブラントンと同じ現象が起きます。つまり、メーカーズマークの風味はしっかりと出ているのですが、言い換えれば混ぜただけという感じです。決してまずくないですし、むしろおいしいんですけどね。
3.実験のまとめ
長々と書いてきましたが、言えることは以下の通りです。
・いまどうかではなく、ポテンシャルの高いウイスキーが感動をもたらす
・普通に飲んでおいしいものと、紅茶との相性は微妙にズレている
・スモーキーなものも、ものによってはいけるし絶大な効果の場合もある
・バーボンは、間違いはないが、感動は生みづらい
・シェリー樽のウイスキーはうまくいく場合もいかない場合もあり、振れ幅大きめ
・茶葉の個性が強い場合、繊細なものは負けてしまう
はい。まあ、値段の高いもののポテンシャルが高いのは、そりゃそうですよね…。ですが、高いからと言っていいわけではない組み合わせも少なからずありました。ここはやってみるしかありませんね。
そして、問題なのはどの茶葉とどのウイスキーを合わせるかを、どう考えたらいいかです。これは、自作のカクテルを考えるのと似ていますね。上に書いた言えることを参考にしていろいろと試していただくのがいいと思いますが、強いもの×弱いものはほぼ必ず強いものが勝つということは言えると思います。逆に、強いもの×強いものや弱いもの×弱いものは新たな何かを生み出しやすい気がします。
4.おわりに
僕もまだまだ手探りですが、今後いろいろとやってみて進展があれば更新していきたいと思います。みなさんも、やってみて何か分かったことがあれば、コメントなどで情報提供していただけるとありがたいです。
ウイスキーの新たな楽しみ方として面白い方法だと思うので、気になった方はぜひやってみてください!