ブランデーとは?
ブランデーってよく聞くと思うんですけど、いまいちどういうものかよくわからない、そういう人多いと思います。
今回はそこについてかるーく解説したいと思います。
1.ブランデーって何?
①ブランデーとは
ブランデーって意外と知られていません。でも、その定義は簡単なのです。
果実酒から作られた蒸留酒、これだけです。
ですから、ブドウのブランデーもあれば、リンゴのブランデーもあり、サクランボのブランデーや杏のブランデーもあります。果実からお酒が造れれば、それを蒸溜すればすべてブランデーと言えるのです。
ではなぜややこしいのでしょうか?
そこのキーワードが、「ブドウ」と「コニャック」です。
日本に限らず、一般的にブランデーというと「ブドウのブランデー」を指します。そして、ブドウのブランデーの代名詞的存在だったのが、「コニャック」なのです。
ウイスキーでいうと、「ブランデー」は「ウイスキー」と同じレベルで、「スコッチウイスキー」が「コニャック」とかのレベルですね。
ブドウのブランデーというのは、極端に言うと、ワインを蒸溜したものです。
そして、ブドウのブランデーが一番有名なのは、それが一番多く、歴史的にも古いからです。これは、次の生産地を見ながら確認しましょう。
ちなみに、同じように言えば、ウイスキーはビールを蒸溜したものですね(笑)
コニャックについては後で詳しく説明するとしましょう。
②どこで作られてるの?
ヨーロッパで作られていた果実酒で、最も多いのはワインですよね。ワイン生産が多い地域というと、フランスやイタリア、スペインなどですね。しかし、やはり一番有名な産地であり生産量も多いのはフランスでしょう。
実は、ブランデーの語源は「焼いたワイン」です。
(余談ですが、フランス語でブランデーのことは"eau-de-vie(オー・ド・ヴィー)"と言います。訳すと「命の水」という意味で、ウイスキーやウォッカの語源と同じですね。)
その語源が「焼いたワイン」であるとおり、ブランデーは歴史的にもワインの蒸留から始まりました。
すると当然、ワイン生産が多い地域でブランデーも生産されるわけです。
そして、フランスではブランデー生産が次第に大規模に行われるようになり、輸出も行われるようになって、非常に有名となりました。こうして、この先のコニャックの話につながっていきます。
※ここからちょっと上級編
じゃあ、イタリアやスペインにブドウのブランデーはないのか、というとちゃんとあります。
イタリアで有名なブドウのブランデーは「グラッパ」と言います。
これはワインからではなく、ブドウの搾りかすを発酵させたアルコールから作ります。
厳密には、「ポマース・ブランデー」という部類で、「粕取りブランデー」ともいわれます。
同様のものはフランスにもありますが、それは「マール」と呼ばれます。
スペインで有名なのは、シェリー酒の産地で作られる「シェリー・ブランデー」です。
これはあくまでシェリー酒の産地で作られたブランデーであって、シェリー酒から作られたブランデーではありません。
どうやらこのシェリー・ブランデーの製法が植民地に伝わり、プエルトリコ、グアテマラ、キューバ、メキシコなどの旧スペイン領のラムの製法になったそうです。
2.フランスのブランデー
有名になったフランスのブランデーは、ブランド化が進んでいきました。そして、その中でも上質なブランデーを作る地域として「コニャック」、「アルマニャック」、「カルヴァドス」が出てきたのです。カルヴァドスだけは、ブドウではなくリンゴのブランデーです。
ちなみに、どれも原産地呼称規制(AOC)の対象なので、認められた地域でないとこれらを使うことはできません。
ブドウのブランデーの場合は、フランスのほかの地域だと「フレンチブランデー」、世界的には「ブランデー」です。
リンゴのブランデーは「アップル・ブランデー」になります。
決してこの地域でないと美味しくないわけではないですが、基準がないので品質が一定じゃないというデメリットはあります…。
①コニャック
ワインで有名なボルドーの北、コニャック市を中心とする一帯で採れたブドウで造られたブランデーを「コニャック」と言います。日本だと、ブランデーというとこれが一番有名ですね。
よく聞く、ヘネシーやレミーマルタン、カミュ、マーテルと言った有名ブランドも、このコニャックです。
ちなみに、土壌によって、生産地が次の6つのランクに分かれます。
1. グランド・シャンパーニュ (Grande Champagne)
2. プティット・シャンパーニュ (Petite Champagne)
3. ボルドリ (Borderies)
4. ファン・ボア (Fins Bois)
5. ボン・ボア(Bons Bois)
6. ボア・ゾルディネール(Bois Ordinaires)
上のランクに行くほど高級になります。しかし、土壌ごとに味が大きく異なってくるので、一概に一番上が一番いいというわけではないのです。沼ですね、ハイ。
②アルマニャック
コニャックとは逆に、ボルドーの南のアルマニャック地方で作られるブドウのブランデーを「アルマニャック」と呼びます。正直日本だと有名じゃないですね…
アルマニャックも生産地の土壌によるランクがあります。
1. バ・アルマニャック (Bas-Armagnac)
2. テナレーズ (Tenareze)
3. オー・アルマニャック (Haut-Armagnac)
実際のところ、よく見るのは一番上のバ・アルマニャック産のものかもしれません。
コニャックもアルマニャックも、同じブドウのブランデーですが、蒸留方法やブドウの品種が違っているので、味わいは全く違います。沼要素②ですね…。
③カルヴァドス
これだけ、リンゴのブランデーです。ブドウではないので注意してください!
フランスの北部、ノルマンディー地方で作られるリンゴのブランデーを「カルヴァドス」と呼びます。
ブドウの栽培限界よりも北に位置していて、シードルと呼ばれるリンゴのお酒が造られていたこともカルヴァドスが生まれるきっかけになっています。
ただし、リンゴのブランデーとは言いますが、完全にリンゴではありません。
洋ナシも混ぜられています。
ここももちろん、ランク分けがあります。が、カルヴァドスでは生産地域だけではなく、洋ナシの混合量も関わってきます。
1.カルヴァドス ペイ・ドージュ(Calvados Pays d'Auge)
ペイ・ドージュ地区で作る、洋ナシ30%以下、単式蒸留器で2回蒸留、最低2年熟成
2.カルヴァドス ドンフロンテ(Calvados Domfrontais)
ドンフロンテ地域で作る、洋ナシ30%以上、半連続式蒸留、最低3年熟成
3.カルヴァドス (Calvados)
上記2つの地域とその他認められた地域で作るかそのブレンド、最低2年熟成
どの地域かによって味は大きく変わりますし、洋ナシの混合量でも変わります。逆に言うと、コニャックやアルマニャックよりも、一番上が一番いいわけでもないのです。面白いですが、沼は深いですよ…
3.その他のブランデー
原料の果物さえ作れてしまえばどこでも作れます。日本でもサントリーやニッカがブランデーを出していますね。最近では「甲州」も見ますね。
ただ、基準が定まっていないというのが大きいです。X.Oなどの表記は、コニャックなどでは厳格な規定があります。しかし、こうしたブランデーにはその基準がないのです。
品質的に保証されているものとなると、どうしてもコニャックやアルマニャック、カルヴァドスへと行ってしまいますね…。
一方で、杏のブランデーやサクランボのブランデーは、よくカクテルに使われます。杏だとアプリコットブランデー、サクランボだとチェリーブランデーとなります。
しかし、このチェリーブランデー、実は複雑です。簡単に言うと、ブランデーにチェリーを付けた、本当の意味からするとブランデーではないものが混ざっています。むしろ、それがチェリーブランデーとして知られてしまっていて、本当の意味でのチェリーブランデーは認識されていないかもしれません…。
マラスキーノやキルシュワッサーは、熟成はしていないものの、ちゃんとしたチェリーブランデーです。知ってあげてください…。
4.ブランデーのグラス
基本的にブランデーはストレートで飲みますが、ブランデーというと、あの大きなグラスをぐるぐるとまわしながら金持ちが飲んでいる…そんな印象が根強くありますね。石原裕次郎スタイルです、はい。
このグラスはスニフタグラスというのですが、質の悪いブランデーが多かった時代の飲み方なのです。
質の悪いブランデーは香りがなかなか立ちません。そこで、手のひらで温めることで温度を上げ、香りを開かせていました。
しかし、現在ではブランデーの質は非常にいいです。
そのため、ストレートで飲む際にも、一般的なテイスティンググラスで十分です。いや、むしろその方がいいのかもしれません。
スニフタグラスだと、ボウルが非常に大きい分、香りが開きすぎてしまってアルコールの刺激も来てしまいます。結果、かえってまずくなってしまうことも多いのです…。
事実、リーデルとヘネシーの共同開発によって生まれたソムリエシリーズのコニャックXOは、一般的なテイスティンググラスの形状をしています。
ですので、ブランデーグラスじゃないといけないなんてことはないのです。
おわりに
ブランデーについて、だいたいはわかりましたでしょうか?
まだまだ説明しきれていないことはありますが、それは追々…。