Saitoの沼通信

Saitoの沼通信

とある若者が趣味のことを語る場所。Twitterでは文字数が足りないようなことが中心。 クラシック音楽、ウイスキー、カクテル、紅茶などが好き。

ポートシャーロット10年(Port Charlotte 10 aged years) 香りと味は開栓後どう変わっていく?

こんにちは!

久しぶりにウイスキーの香りと味の変化です。今回扱うのはブルックラディ蒸留所のポートシャーロット10年ですが、個人的に大好きなので飲み切ってしまって非常に悲しいです。早くもう一本買わないと…

 

 

1.ポートシャーロット10年の基本情報

f:id:Saito_numa:20200711034605j:plain

①基本情報

・メーカー: レミーコアントロー

・蒸溜所: ブルックラディ蒸溜所

・分類: シングルモルトウイスキー

・熟成年数: 10年

・アルコール度数: 50度

・フェノール値: 40ppm

・大麦: スコットランド産大麦100%(インバネス州産)

・樽構成:

ファーストフィル・アメリカンウイスキー樽 65%
セカンドフィル・アメリカンウイスキー樽 10%
セカンドフィル・フレンチワイン樽 25%

・特徴

着想、蒸留、熟成、ボトリングをすべてアイラ島で行っている

 

②公式テイスティングコメント

・香り
清々しい潮風が、スモーキーさを穏やかにしている。オークとスモーク、そしてスピリッツ本来の個性は、10年の熟成を経たことでバランスが取れ、調和が生まれている。ポートシャーロット特有のドライで土っぽく、ピートの灰を思わせるスモーキーなアロマだが、そこにキャラメルソースやファッジ、ヴァニラカスタード、かすかなショウガ、ナツメグクローブなどの波がオークとともに押し寄せて前面に出る。
グラスに注いで水を1滴加えると、優しいレモンメレンゲやオレンジなどのシトラス香が解き放たれる。深く息を吸い込めば、野生のタイムやヒース、ハマカンザシの花のようなフローラルなアロマがあなたを大西洋の海岸への連れて行くだろう。

 

・味

舌に乗せてみると、テクスチャーとその存在感の中に繊細さと柔らかさを感じるだろう。香りと同様にフレーバーも素晴らしいバランスで、オークから深く引き出された甘さをスモーキーさが穏やかに包み込んでいるそしてココナッツ、ヴァニラカスタード、レモンの花の蜂蜜とともに、牡蠣の燻製と日に灼けた砂浜が現れる。

 

・フィニッシュ

フィニッシュは荘厳に訪れる。もちろんスモーキーだが、ファッジやモルティングした大麦、オレンジ、マンゴーの柔らかな甘さと、バナナ・トフィーパイを思わせる質の高いオーク樽由来の深みもある。一口ごとにいくつも重なり合っている層が次々に顔を出す。熟したリンゴやアプリコットモルトやオークの甘さが、煙の如く現れては消えていく。これこそが典型的なポートシャーロットのドライなスモーキーさなのだ。

 

 

うーん、なんとも長いですね…。何となくですが、ワインのテイスティングコメントを連想します、あくまでイメージですが…。

意外と忘れがちなのがフェノール値が40ppmであることと、セカンドフィル・フレンチワインカスク25%使用していること、そして大麦以外は基本すべてアイラ島で完結するようにしていることです。

 

2.個人的テイスティングコメント

今度は私の個人的なテイスティングコメントです。感じるままに書いているのと、次の項で書く変化を総合したうえでのコメントになります。

 

・香り

軽いスモーキーさ、青リンゴ、バニラ、パイナップル。麦やもみ殻のような穀物の香り。奥に草原のような青い草のさわやかな香りも感じられる。

 

・味

焦げた苦みがメイン。穀物,特に麦の甘みとバニラやバナナの甘みもいる。

飲み込むと、ベーコン的な焦げた苦みと麦やバニラの甘み、さらにブドウや白ワイン。生クリームのようなオイリーさ。まれに、ライムやオレンジの柑橘的な甘みと酸味。

 

・フィニッシュ

焼いたベーコンのようなスモーキーさ、バニラ、バナナ、麦などの香りとともに、ナッツやバターなどのオイリーな香り、さらに軽くリンゴなどの香りもある。

 

公式テイスティングコメントとの違いとしては、ワイン樽を使っているからか、白ワインやブドウのような香りを感じ取っていることです。それ以外は大体似ていますが、それほどオレンジやレモンなどの柑橘の香りは感じないようにも思います…。

 

3.香りと味の変化

さあ、本題の香りと味の変化です。

まず、開栓は2019年の10月7日です。この時点では、香りはスモーキーさとアルコール感、そしてバナナと温泉のような硫黄の香り、かすかなスイーツの甘い香りです。味はバニラ系の甘さと焦げた苦み。フィニッシュは、スモーキーさとともにナッツやバターのオイリーな感じ、軽くリンゴやナシのフルーティーな香りです。

この時点ではまだまだアルコール感が強いですが、フルーティーな風味が意外としっかりと出ています。スモーキーさはもちろん強めですね。

 

開栓から一週間経過した10月16日には、初めて青リンゴの香りがしています。今思い返すと、最初にもこの香りはあったのでしょうが、それほど強くはなかったようにも思います。しかしこの時点で、少しの変化があったと記録しているので、事実変わっているのでしょう。

この次に飲んだ10月28日の時点では、今度はパイナップルが初登場しているので、このあたり、つまりボトルの肩よりも減って液面の面積が増えると割と早く変化して、開くようです。

f:id:Saito_numa:20200711142754p:plain

10月28日時点 瓶が黒いので内容量がわからない…

しかし、ここからはほとんど変化しません。ハイボールやロックで飲むことが多かったから、というのもあるかもしれませんが、どちらで飲んでも同じようなコメントが続いています。この傾向が年明けまで続きました。たしかに、年末にかけては柑橘感が出ることもありましたが、出ない時がほとんどで、偶然かもしれません。

 

2月20日、飲み方はロックでしたが、ここでテイスティングコメントに初めて白ブドウが追加されます。今までなかったのか、というとそうではないので、若干強くなって感じ取りやすくなったという感じです。この白ブドウは、わりと高級で皮まで食べられる系の品種の感じです。皮が食べられないものにはない甘みの部分を、特に感じる気がします。ここで残っている量は、半分より少ないくらいです。

f:id:Saito_numa:20200711143335p:plain

2月20日時点

このあたりから、飲む頻度が落ちたのもありましたが開いてくる速度が速くなっているように思います。約一か月後の3月25日にはを感じていますし、その一か月強後の5月8日には醤油のようなコクや、たくあんのような風味も感じています。10月から12月まで、大きな変化がなかったのとは明らかに変化スピードが違っています。もしかすると、気候的に温暖になっていったのも関係があるかもしれません。

 

6月23日からは、もう残り100ml程度であったこともあって、今まで閉じていた要素が一気に出てきている感じです。6月23日時点ではオレンジライムベルガモットなど柑橘系の香りと味(柑橘類の酸味だけでなく甘みも含む)が非常に出ています。その後、6月27日には醤油かつお出汁などのコク感がかなり出ています。こうなると、もうその日の気候に非常に左右されますが、非常においしいことには変わりありません。

 

7月7日、最後は意外とすべてが詰まっていました。

香りはパイナップル、若いリンゴ、麦、アロエ、スモーキーさ、少し奥にカラメルの焦げた香りやメープルシロップなど、全体的に黄色感が強い。

味は、口ではリンゴや洋ナシ、そして麦の軽い甘みと軽いスモーキーさ。飲み込むとスモーキーな焦げ、麦の甘みとパイナップルの酸味、次第にレモンのような柑橘系の酸味へシフトしつつ、生クリーム的な質感が残る。

フィニッシュは、スモーキーな香り、リンゴや洋ナシ、軽くバニラ、南国系フルーツ特有の甘い香り(いわゆるトロピカル詐欺ではないです)、どこかに醤油のような香りなど。

 

こんな感じでした。ターニングポイントは10月16日、2月20日ですね。

 

4.香りと味の変化のまとめ

ポートシャーロット10年は、上の詳しい変化を見てみるとわかるように、まずくなる時期がありません。もちろん、私が個人的に好きだからというのもありますが、悪い要素が出てくる時期がないのです。また、同時に要素が大きく変化する時期もありません。度数の高さによって安定しているのか、それとも原酒自体が安定しているからなのか…。

 

①香りの変化

最初はスモーキーさとアルコール感がメインで、奥に青リンゴバナナがいる感じです。麦やパイナップルはいることはいますが少ない印象です。

半分くらいに減るとそれほど劇的ではないですが、しっかりと開いてきます。ブドウ感の増加やパイナップルの追加、さらに感もより強くなります。また、同時に次第にスモーキーさの主張が弱くなっていきます。以前まではスモーキーさがメインだったのが、ほかの要素と肩を並べられる程度になった感じです。

残り1/6程度かそれ以下になると、大きく開いてオレンジベルガモットなどの柑橘の香りや、醤油かつお出汁などの香りも出てきます。しかし、お互いがお互いを引き立てあっているのでけんかせず、非常にいい香りです。

 

②味の変化

味には不思議とあまり変化がありません。最初から一貫して、スモーキーな焦げた苦みと、麦やリンゴ,洋ナシの甘さです。飲み込んでからも、焦げた苦みとともに麦やバニラの甘みを感じたのち、生クリームのような質感が残ることは変わっていません。確かに、香りによって味は変化しますが、それでもほぼ変化しているような感じませんね。

唯一変わっているとすれば、アルコールのアタックです。やはり最初のころはアルコール刺激の強さはありました。

 

③フィニッシュの変化

最初のころはスモーキーさとともに、青い草の生い茂った草原や、夏の田んぼのようなそんな草の香りがしていました。

しかし、こちらは香りと比べて少し変わるのが速く、半分減るか減らないかあたりから甘い香り酸味のある香りが追加されてきました。記録では、リンゴやブドウ、ブルーベリー、さらには杏など、何とか表現しようとして、逆に定まっていません…。

残り1/5くらいになった時点で、ここに醤油かつお出汁的なコクのある香りが追加されてきます。草のような香りはこうなってくるとあまり香ってきません。香る場合でも、ブドウのつるくらいの感じです。

 

④今後への展望

しっかりと項目ごとに見てみると、フィニッシュから変化が始まっているように思われます。フィニッシュ→香りと変化が伝播していったようなので、もしかすると、もっと時間をかけると味ももっと変化するのかもしれません。また、季節による気温や湿度の上昇と変化の速度が似ているので、そこも変化の重要な要素になっているように思われます。次はそうした点に特に注目してみたいですね。

 

おわりに

いかがでしたでしょうか?

最初にも述べたように、ポートシャーロット10年は個人的に大好きなウイスキーです。まだ飲んだことない方がいらっしゃったら、ぜひ飲んでみてください!

それでは。